滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



外材と日本人の身体

 「安かろう悪かろう」はすべての商品に当てはまる一つの法則である。
 その身近な例として建物を考えてみよう。このごろの木造建築物は住宅を含めて外材が圧倒的に多い。日本産の木材が高いので輸入木材にたよるわけだが、なぜ輸入材が安くて日本材が高いのか。
 それは日本材が固くて丈夫、耐久性が秀れているからである。輸入材は柔らかくて加工がしやすいが、痩せやすく寿命が短い。
 鶏でいえばケージに入れられるのと放し飼いの違いである。放し飼いの鶏は足腰がたくましく肉がしまっておいしい。ケージで育った鶏はぶくぶく太って味は淡白である。当然ながら放し飼いの自然派の鶏肉は値段が高い。
 日本の木材はなぜ質がよいのか。外国産と日本産を比較すれば一目瞭然だが、年輪がまるっきり違う。日本の木材は年輪がぎっしり詰まっているが、外材のそれは間隔があって、いわば間伸びしている。
 それはどういうわけか。外材は熱帯地方や雨の多い地域で、土地が肥沃かつ広大であり、発育の速度が日本の倍以上の効率を誇る。早い話が稲を1年に2回作るようなもので、回転が早いから2倍の収穫を得ることができる。
 日本の木材は急斜面の山岳地で育ち、風や雪に苦しむし、梅雨期を除いては雨が少ない。急斜面であるから雨は地下へも潜るが斜面を流れて河川へ注ぎ、樹木をうるおすのに条件が悪い。熱帯地方のように日射が強くないし、地質の肥料分も劣る。
 こうした成育条件の違いが木質の差につながってゆく。分かりやすくいえば、苦しい環境、不利な環境で育つから、大きくなるまでに時間をかけねばならぬ。年輪がこむというのは1年1年の成長の速度が遅いことを意味する。
 別の面からいえば、きめ細かい成長しているわけで、1年の歳月をかけても外国の木の半分以下しか太くならないし、伸びない。言わば固肥えしているわけで、筋肉隆々のスポーツ選手のような頑丈な体つきといえる。
 外国産の木材は温かいところで、ぜいたく三昧にたっぷりと日照と肥料をもらって育ったようなもので、結果として、ぶく肥えで、力のない弱々しい体つきとなる。
 だから、製品として外材を使用すれば国産に比べて長持ちしないし、虫にやられやすい。もちろん、日本特有の湿気にも抵抗力が弱い。
 だから、日本の住宅メーカーは、安かろう悪かろうではないが、耐用年数25年くらいを標準に設計している。
 本来の日本式建築は100年は普通であり、200年以上の建築物も珍しくない。今は消費時代だから25年で建て直せばいつでも新しい家の感覚で住めるし、その都度、設計の変更や新しい魅力を加えることができる。なによりも早く建てられるし、安上がりである。
 地震に強い弱いは別として、いま、流行のハウスメーカー仕立てによる住宅が一般化しているから、従来型の棟梁や大工さんは受難である。その結果、匠の術で身を支えていた大工、左官職などが職を奪われてしまった。
 人間もまたこれに似ている。雨、風、雪に叩かれての苦労した人生ではなく甘やかされての温室育ちが一般化した。だから今の日本人はみな弱い。外材なみなのである。弱いけれども近代医療でもたしているだけである。医療費が増えるのは当然である。【押谷盛利】

2010年03月10日 15:04 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会