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あえて警鐘を打つの弁

 友人が「もの忘れして困る。このまま痴呆になってゆくのだろうか」と心配そうにいう。「そんなことはない。年をとると、みんなもの忘れがひどくなるよ」と答えるぼく。
 「耳が遠くなって困ってしまう」という愚痴を聞くが、ぼくは「ろくでもないことは聞かんでよろしい、という神さまのお計らいだから」と慰めることにしている。
 歯が抜けてものが食べにくくなったり、さっさと歩けなくなったり、言葉がすらすら出なくなったり、服の着脱に時間がかかったり、こういう現象は老齢化による自然現象だから悲観することはない。人間はすべて、百人が百人老齢化し、そして、この世から消えてゆく。いわば、この世とのお別れのセレモニーで、いやが応でもこの「衰え」の儀式を通過しなければ自然死は迎えられない。いわば大往生の通過儀礼である。
 平均寿命が伸びたのはめでたいことではあるが、宇宙の神の法則から言えば神意にもとるともいえる。
 なぜなれば、医療技術などと称して、無理無体に生命を生かす術が一般化してきたからである。宇宙規模でものを考えるならば、天の神さまは、人間のみならず生きとし生けるもの、すべての生物にそれぞれの役割を分担させ、それぞれにふさわしい寿命を与えている。それによって気候、環境、生活圏、食糧、資源など地球上の生物のバランスが保たれている。
 そのバランスは神意であるが、近代科学の振興が神の神意であるバランスを崩してしまった。
 人口の爆発的増加と科学技術は資源を食いつぶし、地球を汚し、国家間の争いを助長する。人間は老化して消えてゆくが、他の生物に比べれば、その生存期間は長い。
 犬や猫はたかだか20年だが、虫は1年で消えてゆくものもある。長寿するのが幸せなのではなく、価値ある生き方をし、美しく老いて、美しくおさらばするのが幸せなのであり、それがみんなの願いである。
 だから、ものが食べられなくなったり、呼吸がしにくくなれば、お迎えの信号と思って、いさぎよく応じる心が大切なのに、あらゆる医薬の粋を駆使して、尽きたる命を引き伸ばすのは神意に反するといわねばならぬ。
 そうしないと医療産業がもたないとか、製薬会社が赤字になる、などというのは本末転倒で、人間の尊厳を冒涜する行為である。
 ここで政治論をするのは野暮だが、これからの日本の財政の最大の心配点は医療費と高齢者福祉、年金である。
 年寄りに気がねして高齢化社会による危機を政治家も評論家も言わないが、国民個々の家庭には不幸がしのびよっているし、何よりも高齢者自身がみじめで不幸な最期をおくる。あえて警鐘を打っておく。【押谷盛利】

2010年02月22日 16:04 |


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