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心を拘束するという話

 拘束の拘の意味について考えたい。身体の自由を奪うのが拘束で、警察が容疑者を逮捕して調べるのが拘束の分かりやすい例である。
 それでは外からの力ではなく、自分で自分の行動を拘束する精神的作用は何というのだろうか。
 息子の大学合格を祈って願掛けする親があるかもしれない。その願掛けの一つに茶断ちがある。茶を飲みませんからパスさせて下さいと必死に祈る母親の気持ちはありがたい。
 戦争中、戦地へ召集された兵たちの家庭では、母親が毎朝、氏神へお百度参りしたとか、好きな食べ物を断って祈願したという話は珍しいことではない。
 これは、だれかに強制されたり、命令されたものではなく、わが子かわいさ、わが子の無事帰国を願う親心である。自分で自分の心に誓い、生活の上で一種の拘束をかけることだが、このほかに精神現象としてはだれもが持つ「こだわり」がある。こだわるは拘ると書く。抽象的な言葉で人それぞれに拘る対象がある。
 全くこだわらぬ人もあるかもしれないが、人は無くて7くせというから、目立つ目立たないかの違いかもしれない。
 事例をあげれば納得するだろうが、こだわるよりもこだわらない人の方が好かれるかもしれない。
 左党を例にとりあげれば日本酒かビールか、それとも洋酒か。こだわる人はビールでもキリン、アサヒなどと銘柄にやかましい。
 女性のなかには派手好みか、優越心なのか、ブランドにこだわる人がいる。それは毎日使う化粧品についてもいえる。
 ぼくの子どものころ、祖母はよく「月の7日は旅立ちするな」と戒めた。わけ分からず、7日に出発すればよくないことがあるのだろうと迷信のように思っていたが、別に逆らうこともしなかった。
 後になってよく考えると、人の死につながっていることが分かる。それはこじつけだが、人が死ぬと喪に服し、7日、7日に逮夜参りをする。死者が男の場合は49日、女は35日。最初の7日を初7日という。それを頭に「月の7日は旅立ちするな」。いわば7日を忌み日としたのであろう。
 迷信にもとづくこだわりの一例である。菜食主義もこだわりといえばこだわり。
 なにかを決めるとき、日が良いか、悪いか、暦を見なくては気のおさまらぬ人がいる。こだわるは心の世界だから、これの強い人は頑固ものといわれる。がんこなのは人間が正直ともいえるが、人づきあいにまるみがないことになる。
 がんこものは呆けやすいともいわれるが、礼儀作法や人の道にこだわる人は心に屈託がなく、常に天地を敬う気持ちが強く、宗教心の厚い人が多い。
 なにはともあれ、健康にこだわり、価値ある生き方にこだわって、幸せな生涯を送れれば最高であろう。【押谷盛利】

2010年02月10日 15:00 |


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