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紅葉と自然美と人間

 紅葉が美しい。天気のよい日は、日差しに映えて、まぶしいほどに色が冴え、赤、だいだい、黄の綾なす色彩が思わず桃源郷に誘われる思いである。
 今年の紅葉は、晩秋の温かさのため、いま一つ目栄えぬと言われていたが、さすがに季節の移ろいは争えぬ。11月も下旬になると山の気配が一気にあかるみを増す。
 落葉樹が霜や夜露に葉をいろどらせ、もり上がる暖色が山の容貌を明るくやわらげる。ところによっては落葉して山頂が櫛の歯のように透けているのもあるが、湖北、湖東の山々は今が見ごろといっていいほど美しい。
 朝日を受けた山、夕日に照らされる山、日の真盛りに合唱している山、いつ見ても見あきのしない見事名自然の色彩美である。
 11月末の連休は今年最後の遊山気分か、どの観光地も人と車でごった返した。
 高速道路どころか、一般の国道でも渋滞が生じ、世の中、不景気とは言うものの、人々の遊び心はお大尽を思わせるゆとりぶりである。
 山々の紅葉の美しさに見惚れていながら、ふと、犬や猫や空飛ぶ鳥たちはこの紅葉をどう見ているのだろうか、と変な気分で、彼らの好みや関心を考えてみた。
 花を、紅葉を美しいと眺める目、虫の音や鳥の鳴き声に耳を傾けるのは人間だけだろうか。いや、鳥の声や木々の変化や花の美に感動するばかりではない。風のそよぎや川の流れ、月や星、雪の姿にまで心を奪われるというのは人間だけに与えられた神さまからの尊い贈り物であろう。
 昔から自然美に対する人間の好奇心を笑うかの如く、「花より団子」とイロハカルタにも登場するが、いやしいといえばいやしいのもまた人間の性である。
 紅葉の行楽地はいづこも同じで食べ物屋や土産品屋に人だかりする。紳士淑女も旅の恥は掻き捨てよろしく、五平餅を食べならが、ソフトクリームをほおばりながら楽しげに歩いている。
 鳥は花にさえずることはあるが、あれは花の蜜がおめあてなのだろう。蝶もそうである。花を見て喜ぶというよりも花の蜜の香りに興奮しているのではないか。
 その点、人間はぜいたくな時間と空間に恵まれている。花や紅葉の下で、自然美に賛嘆しながら、家族や仲間たちとご馳走を囲んで楽しい一刻を過ごすのである。毎年似たことを繰り返しながら。【押谷盛利】

2009年11月30日 13:26 |


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