近江絹糸の労働争議(見聞録)
滋賀労働局が日本電気硝子に偽装請負を是正するよう指導していたことが明らかになった。
県労連によると、同社能登川工場で働いていた請負労働者18人の勤務実態は派遣労働で、「偽装請負そのもの」だった。
派遣として労働者を受け入れた場合、勤務期間が3年を超過すれば、会社側に直接雇用を申し入れる義務が生じるが、それを免れるため、「請負」という形に見せかける、というのが偽装請負の手口だ。
空前の利益をあげた有名企業の製造現場でまかり通っていたこの手口は、2006年ごろから朝日新聞が徹底的に追及したことで、明るみになった。
◇生産量に応じて簡単に採用、解雇できる非正規労働者は、企業にとっては都合が良いが、当の労働者はいつクビを切られるか、不安定な生活が続き、結婚も難しくなる。
「正社員」だけが残り、「非正規労働者」が切り捨てられる弱肉強食の構造を放置すれば、社会問題化するのは明白だろう。
◇共産党系の「滋賀民報」で5月からスタートした「近江絹糸人権争議」は、半世紀前の彦根市の紡績工場を舞台に、当時の労働者がいかに会社側と戦ったのかを伝えたタイムリーな連載。近江絹糸工場で働いていた白石道夫氏が綴り、「証言」コーナーでは、争議に関わった人々が手記を寄せている。
愛媛県出身の同氏は、戦後の貧乏暮らしの中、「働きながら学べる」との宣伝に惹かれ、中学卒業後、工場に入ったが、そこでは、各地からの卒業生が集団就職し、工場は塀で囲まれていた。
信書の開封、私物検査は当たり前で、「チチキトク」の電報は、信書開封係によって伏せられ、「チチシス」で初めて、労働者に連絡された、という。
◇1954年6月2日から105日間にわたって行われた労働争議では▽仏教の強制反対▽結婚の自由▽外出の自由▽信書の開封や私物検査反対―など、封建的な労務管理の撤廃を求め、全従業員の8割強が組合活動に参加した。
会社側は拒否を貫き、工場で働いていた元長浜市議の野崎幸子さんは「会社は製品搬出を阻止しようとスクラムを組んでいる労働者を、暴力団に襲わせた」と振り返っている。
争議は政府の介入を促し、会社側が労働者側の主張を受け入れて妥協。当時、過酷な環境を強いられていた労働者に自覚と勇気を与えた。
◇さて、現在は当時に比べると労働環境は格段に良くなり、福利厚生も充実している。しかし、大企業は世界規模の競争に勝ち抜くため、何のためらいもなく労働者を切ってゆく。
労働者のために企業があるのか、企業のために労働者があるのか。企業の本質を考えさせられる。
2009年06月16日 14:43 | パーマリンク
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