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山上憶良の貧窮問答

 万葉集のなかで最も異彩を放っているのは山上憶良の貧窮問答歌であろう。
 二部構成の長歌で、始めに貧しい男が冬の夜の寒さに耐えかねて絶望的に問いかけ、これに対してさらにみじめな貧しい男が、世の中、なんでこんなに苦しまねばならぬのか、と嘆きながら答えている。
 2人の貧しい男の対話の形をなしているが、作者憶良の当時の庶民感覚による心の叫びであろう。
◇山上憶良は学識の才がありながら家がらの関係か出世コースに乗らず、聖武天皇のころ、晩年になって筑前の守に任ぜられた。言わば身分の低い宮廷役人だった。
 しかし、生まれつき頭脳明晰であったのか、若いころは遣唐使の書記として唐に渡っている。
◇さて、貧窮問答の長歌は内容が具体的で、当時の庶民の暮らしぶりの一端がうかがわれ非常に興味を呼ぶ。
 原文を全部紹介したいが万葉集時代の言葉で分かりにくいところが多く、原文と訳文を書けば紙数をとるので、ここでは、角川書店発行の「万葉集(高木市之助・田辺幸雄編)」の訳文を参考にわかりやすく意訳して紹介する。
【第一段】
 風まじりに雨が降り、雨まじりに雪の降る夜は、どうしようもなく、酒の粕汁をすする。咳は出るし水鼻はぐずぐずするし、不精髭(ひげ)をなでながら、おれ以外は人間らしい人間はあるまいと自慢はするが、やっぱり寒いので、麻のふとんをひっかぶり、布の袖なしをあるだけ引っぱり出して重ね着するが、それでもたまらなく寒い晩だ。
 それなのに、このおれよりももっと貧しい人のおやじやおふくろは飢えて凍えることだろう。その妻や子供は泣きじゃくっているだろうが、こんな時は、君はどんなふうにして暮らしているのだ。
 以下【第二段】の対話は次回へ。【押谷盛利】

2009年01月28日 14:43 |


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