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経済危機と国家の将来

 アメリカを中心に世界同時不況が来る年の不安をかき立てている。円が高いといわれる日本も例外ではない。
 アメリカ経済の不安はGMなどビッグ3といわれる三大自動車メーカーの経営危機によるものだが、それ以前に低所得者向けの金融未回収による金融不安が底辺にうごめいた。
 かつて、日本も住専(住宅専門供給公社)の経営破綻が一部銀行の危機を招き政府資金の発動で急場をしのいだ経緯がある。
◇経済社会は人間が構築したものであるから常に上向きで、安定しているというわけにはゆかぬ。安心・安全の希望的仮説に依拠して国民の経済生活がなり立っているだけで、いわば約束手形という経済社会を国家が裏書きしているにすぎない。
 したがって、国家の裏書きがなくなれば経済はあっという間に無秩序に混乱し、株券や国債などという資産はただの紙きれに過ぎなくなる。
 ブッシュ大統領がビッグ3の破綻につなぎ融資1・5兆円の救済策を打ち出したのは賢明であり、それが国の裏書きというものの権威である。
◇日本が明治維新を迎えたとき、時の政治家の一番苦慮したのは武士の処遇であった。武士は藩主から領地を与えられ、それが100石とか1000石とかの家禄により生活を支えてきた。いわば役人の俸給のようなものである。ところが藩主は自分の領地を国に返上し、幕府と藩による封建政治が終わって、代わりに明治新政府が生まれた。失業した武士階級に対する救済措置を採らねば不平武士の暴動が全国的に波及する。そこで新政府は武士の禄高を金券で補償する政策を打ち出した。これが武士に対する政府債で、何十年間にわたり償還してゆくシステムで、今の国債と同じ発想であった。
 ところが、国債をもらった失業武士の中には将来の不安からそれを保持することを避けて売却する者が出た。それを安く買う商人が現れて、銀行業が始まった。銀行が国債を買ったのは将来の安心感があるからで、出資に見合う金利を計算した上での商業ベースであった。
 ただし、それには前提があった。明治政府が堅実に政治をすすめ、日本の商工業の発展が約束づけられているという前提であり、これが当時の国民に対する明治新政府の裏書きであった。
◇しかし、国が経済社会の最終的裏書きをしているといっても、国民が危機を乗り切る努力や自衛を講じない限り、小さな穴から堤防が崩れる恐れなしとしない。
 小さな穴から堤防が崩れれば、その怒涛の水の勢いは平野を埋めてしまうかもしれない。それはこれまでの経済社会の破綻を意味し、革命現象につながる。ソ連の出発点となったロシア革命がこれであった。
 為政者や官僚が国民の苦悩を無視して驕り続けたり、国民が自助努力を放棄して、あれもせよ、これもせよと国に注文をつけ、国家の予算をあくことなく拡大してゆけば、行きつく先は国家の経営自体が困窮する。国が破綻すれば、約束手形の裏書きは紙きれ同様の惨事となる。
◇政府が経済の危機に財政出動するのは、アメリカが自動車ビッグ3に融資するのと同様正しい政策であるが、それは決して手放しの救援策であってはならぬ。日本の国債30兆円限度の大原則は小泉内閣の経済安定長期政策だったが、今、麻生内閣で捨てられようとしている。国債を限りなく発行すればその償還に苦しむのは次世代の国民である。苦しみの総和が国家不信、暴動、経済の無秩序、外部からの侮りなどに転移すれば、国の裏書きどころか、国の独立の危機すら招きかねない。それが分からない政治家は国を潰す。【押谷盛利】

2008年12月20日 16:33 |


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