「変」の漢字から考える
いい、悪いは別として今年もあと10日程で暮れてゆく。
今年の世相というか、特徴を漢字一字に凝縮すればどんな字を挙げるか。
国民一人一人の思いは千差万別であろうが、国民から募集したなかでは「変」が一番多かった。
例によって京都は清水寺の管長が墨痕鮮やかに変の一字を披露した。変はよいか、悪いか。こんな質問は愚問である。よい変もあれば、よくない変もある。
◇日本では昔から正月料理に鰤(ぶり)を珍重する。それは出世魚といわれるからである。つまり成長とともに名前が変化する。幼魚は「ワカシ」、関西では「ブリゴ」という。
それが20㌢から30㌢程になると「イナダ」、関西では「ハマチ」。さらに大きく成長して60㌢くらいになれば「ワラサ」と呼ぶ。
最後は1㍍ほどの大きさになって日本各地の沿岸を回遊する。産卵のため冬季に南下する寒ブリは美味最高の高級魚として一流料亭へ流される。寒波厳しき日本海ものが喜ばれ、海の荒れる前兆に鳴る雷を「鰤(ぶり)起こし」という。
成長するに連れて名前が変わるから出世魚であり、縁起がよい。鰤にあやかるわけではなかろうが、人間も江戸時代までは幼名のほか、元服名、成人名と名を変えた。
このほか子供の成長を祝う儀式に七・五・三参りがある。
◇食べ物はもちろん、動物の死体や枯れた草木などは、地上や地中で腐って土に返るが、これは腐敗菌による物質的変化で、腐らなかったら大変なことになる。市販の飲食物には防腐剤を用いるが、ものが腐らなかったら人間は生きておれない。
麹(こうじ)菌作用で米が酒になったり、大豆から味噌、醤油が出来るが、これらはものの生命が変化して生かされている人間の知恵の産物である。
◇今年の漢字「変」は、今年の暗い気持ちが発想しており、新しい年のよき変化を望む声ともいえる。
その点で、一足早く、「変」を政治に求めたのはアメリカ国民だった。「チェンジ(変化)」を合言葉にオバマ氏が大統領に当選した。
日本の暗い世相は秋葉原の無差別殺傷事件に象徴されるが、それだけではない。
食品の偽装事件や中国のギョーザ、年末が近づくに連れて円安、株高、生産縮小、人員整理など、世界同時恐慌の嵐の前夜。このおぞまじい変化は世界最大の自動車メーカー・GM社の破綻説まで飛び出る始末。世界の人々の幸せ感に水をぶっかける21世紀最大の変化になるかもしれない。アメリカ国民ではないが、「嵐よ去れ」。祈るような新しい変化への願望が切ない。
◇さて、日本の政治にチェンジはあるのか。その鍵は解散総選挙にある。変人・小泉元首相が手をつけた政治・行政改革は福田、麻生政権下で足踏みしつつ後退の感があるが、他方「改革止めるべからず」の政界再編成の空気も出てきた。
「変革」「チェンジ」。われわれ自身の心にも生き方にも同様に変革の求められる時である。【押谷盛利】
2008年12月18日 19:11 | パーマリンク
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