小泉容疑者と現代社会
元・厚生省次官夫婦らを殺害した小泉毅容疑者(46)は、孔子のいう論語の「不惑」の年をとっくに過ぎている。人生における要(かなめ)の年代で、いわば日本を支える基幹年齢層である。
理工系を得意として、少年時代の印象は賢くて明るい。大学を中退して社会人になったが転々として仕事が長続きしない。
大学中退から今日に至るまでの4半世紀は長いが、その間の消息は不明な部分が多い。
最近の2年間は無職だが、滞ることなく家賃を支払っており、逮捕時にも現金8万余円を持っていた。
彼の見えない4半世紀の生活はおいおい明るみになるだろうが、これまでの聞き込みや関係者の話から分かったことは、人間性が荒(すさ)みきっていたことが分かる。
気に入らないと大声を発して怒鳴り散らし、相手に恐怖心を与えることが多かった。
近くの住人何人かが被害者になることを恐れて転居した話も伝わっている。
タクシーがすれたと抗議し、補償を受け、病院通いを理由に毎日のようにタクシーを利用した。
当たり屋の味をしめたのか、何かに言いがかりをつけて金をまきあげた形跡を感じとれる。
そうした荒れた生活と心が言動に現れて暴力団員風にもみられたようであり、眼光も鋭く、裏社会で生きている感じが強い。
◇彼は少年時代、かわいがっていた犬が保健所に殺されたことにうらみをもって犯行に及んだと自白したが、その経過が余りにも長すぎて真実性に乏しい。
彼が真実、犬の生命を重んじる動物への愛護心があるならば、人間を殺害する行為との矛盾、理由もなく2人を殺し、1人を刺した犯罪に対しては死刑もしくは長期懲役を覚悟しなくてはならぬが、そのことをどう考えたのであろうか。
◇彼の精神分析は容易なことではないが、図書館で官僚の住所を見つけ、それをたよりに被害者宅を見聞するあたりはしっかりした知性を感じさせる。
殺害を自首して警視庁に出頭するパフォーマンスには一種の分裂症が垣間みられる。
しかし、人を殺害しては、彼の人生は暗闇であり、結果は裁判を待たねばならぬが地上から消されてゆくか、牢獄で人生を終わらねばならぬ。
生きるということ、気に入らぬ者を怒鳴りつけ、裏社会であれ、何であれ、好きに生きてきたこれまでの人生にけりをつけることを望んでの犯罪とは信じられない。
つまり、殺人の動機が全く見えてこないところに今回の事件の不可解さがあり、これまでの心理学や犯罪統計を超えた別次元の因縁が作用している。
◇だから、法や、学問がいかに追及しても真相は解明できぬ。人間の体内に生じるガンのような腫瘍である。ガンは早期に発見し摘出したり、対症療養すれば大事に至らぬが、精神的ガンは発見も困難なれば治癒策も難しい。
第一に本人が病人であると自覚しないからである。
実は心を病む精神的ガン病者がうろうろしているにも拘わらず、その予防や対策が全くおろそかにされているのである。これゆえに、信じがたい犯罪や殺人事件が毎日のように発生しているが、為政者や国民はこの社会的現象をどう受けとめているのか。
根本から現代人の生活を総括しなければならぬ。【押谷盛利】
2008年11月29日 17:00 | パーマリンク
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