時々刻々、橋下知事へ
時々刻々、世の中は停滞することなく、変化し流れてゆく。古きものは朽ち亡び、新しきものがそれに代わって登場する。
29日、記者会見して引退を表明した世界女子マラソンの元チャンピオン・高橋尚子さんの涙は劇的だった。
多くのファンは共感の涙をそそられたことであろう。彼女が00年のシドニー五輪で、日本陸上女子初の金メダルを獲得したときの感激は忘れられない。
堂々一着の輝く栄姿は、根(こん)も精も尽き果ててその場に倒れこむかと思いきや、どうして、どうして、にこにこと笑顔を振りまき、場内を軽やかに走りながらファンの歓声に応えていた。あの余裕とファンへの温かいシグナルは、おそらく遠く隔てた日本のファンへの挨拶だったのであろう。
彼女は翌01年、ベルリン・マラソンで2時間19分46秒の世界記録で優勝した。日本女子マラソン界における彼女の功績は永く国民の記憶に留まるにちがいない。
◇高橋尚子さんの引退発表の同じ日、政府は今年の文化勲章の受賞者を決めた。選ばれた8人は11月3日、皇居で天皇陛下から授与される。
8人の中に、世界の音楽家・小澤征爾、関西になじみの浪速っ子作家・田辺聖子、戦後世界の水泳界に話題を投げた古橋広之進さんらが入っているのが嬉しい。
古橋さんは、敗戦でうだつの上がらない日本人の心に夏の太陽のような明るい光を投げかけた。フジヤマのトビ魚の異名で、世界の水泳界に踊り出た彼は、日本記録を更新するばかりか、数々の国際レースで優勝した。現役引退後は日本オリンピック委員長として活躍した。
◇今年のプロ野球はシーズンオフに入ったが、かつて甲子園を沸かし、プロ野球界に入っても実力ナンバーワンとしてファンの目に焼きついていた桑田投手(巨人)。清原内野手(オリックス)らの引退が淋しい秋風を思わせた。
淋しいといえば、阪神ファンに忘れられないのは終始独走しながら、終盤で巨人に追い抜かれてセリーグ優勝を逃した不様であろう。岡田監督は勝利の美酒を奪われた挙げく、球団を去ることになった。
勝負の世界の厳しさだが、新しい監督に真弓というスターをかつぎ出したことは朗報というべきだろう。
プロ球界は、かつてONで騒がれたミスタージャイアンツの長島も影が薄くなってきたし、世界の王の王貞治もソフトバンクの監督を退いた。新陳代謝は目立たないようだが、確実に進んでいる。
◇栄枯盛衰はスポーツ界のみならず、あらゆる世界に普遍的であるが、その最も厳しいのが政界である。福田さんの後、麻生さんが颯爽と登場したが、落ち目の自民党の救世主になるか、いや、自民党の問題ではなく、内外に難問を抱えている日本の政治に希望の星となり得るか、日本はもちろん、世界の注目を呼ぶご仁である。
さて、日本の政治を思うとき、このごろ、つくづく、すごい政治家が出たと注目しているのが大阪の橋下知事である。
歯切れのいい毒舌といい、当意即妙のさわやかな言論、何よりも不退転の政治信条に撤していることである。
歴代府政の主体性の喪失が莫大な赤字府政を残したが、彼は大胆に赤字減らしを敢行した。それは一切の聖域を認めず、既得権の甘みにも切りこんだ。
歴代府知事のなし得なかった教育改革にも体を張った。日教組の害で大阪の子供の成績が悪いと断じて、全国テストの結果発表を踏み切らせたり、問題発言で大臣を棒に振った中山氏を擁護するなど、通常のトップの言い得ない、踏みこみ得ない難しい問題にも臆することなく、正々堂々と主張するのはその背景に府民を思う正義感があるからである。小泉後の日本の救世主を彼に求めたいのがぼくの念願である。【押谷盛利】
2008年10月29日 15:47 | パーマリンク
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