太郎と一郎あれこれ
麻生太郎氏が福田後継の自民党総裁になり、首相に選ばれたとき、マスコミは最大野党の小沢一郎民主党代表と比べ、次期衆院選を太郎と一郎の決戦と面白おかしく取り上げた。太郎は祖父に吉田茂という大物を持つが、一郎も大臣歴のある父の2世である。
一郎というと、いまの民主党幹事長・鳩山由紀夫氏の祖父・鳩山一郎が戦後の自由民主党の初代総裁であった。
太郎についていえば、自民党若手に河野太郎氏がいるが、彼の父は現在の衆院議長・河野洋平氏、その父、つまり太郎氏の祖父は東京オリンピック前の建設相だった実力者・河野一郎である。三木武吉や大野伴睦、岸信介らと組んで、吉田茂を引きずりおろした55年体制幕開きの闘志だった。
◇政治家は選挙で票を入れてもらわねばならぬので、名前が大事である。早く目に止まり、覚え易くて、忘れにくい名がよい。どの親だって、わが子の出世や幸せを願わぬものはいないから名付けには気を使うことになる。気を使いすぎて、中国の古典などを持ち出す人もあるが、あまり難しくてルビをつけねば読めないのも困る。
ぼくの友人に大島という男がいた。政治の好きな男で、戦時中の中野正剛の崇拝者だったが、生まれた息子に大とつけた。姓が大島だから「大島大」である。海苔(のり)のメーカーではないが、上から読んでも下から読んでも「山本山」のように、上から読んでも、下から読んでも「大島大」。面白いので忘れぬが、その息子、政治家になったかどうか、今は沙汰がない。
◇一郎は太郎と共に名前の上では多数派であり、人気が高い。ただの一郎では平凡だというので小泉純一郎氏のように純を入れたり、郷土の政治家だった草野一郎平のように下に平をつける手もある。
これと似て太郎にも上に化粧する名が多い。
戦前の政友会の大物で、石川県出身の永井柳太郎は雄弁の大家として知られた。滋賀県選出で戦後、衆院議長になった堤康次郎は彼の後輩であり、永井はその先生だった。康次郎は西武の草創者だが、息子たちは政治には進まず経済人となって活躍している。
いまの東京都知事・石原慎太郎氏は、政界では運輸大臣を経験するなど口八丁、手八丁の実力者だが、元は小説家だった。
太郎関係では、元総理の安倍晋三氏の父は総理を目の前にして病死した安倍晋太郎。一郎では今の財務兼金融相の中川昭一氏の父は中川一郎元農相で、総裁選にも出た実力者。自民党を出て新党大地の代表となっている鈴木宗男氏は一郎の秘書だった。
◇政治家以外も太郎、一郎関係の有名人は多い。ぼくの尊敬している歌人に佐藤佐太郎がいる。斉藤茂吉に師事し、アララギ派で秀れた弟子を育てている。童話、歌謡曲の作詞家・詩人にサトウハチローがある。本名は八郎。小説家・佐藤紅緑の長男である。
故人になっているが、芹沢光治良は百歳近くまで小説を書き、日本ペンクラブの会長をしていた。その著「神の計画」「神の意志」などはぼくの座右の書である。
作家で印象に残るのはこれも亡くなってから日が浅いが新田次郎が忘れられぬ。彼は山嶽小説の第一人者で「強力伝」で直木賞、武田信玄で吉川英治文学賞を受賞している。このほか小説家では城山三郎。
芸術家では岡本太郎の家系が特筆される。太郎は大阪万博の象徴ともいうべき太陽の塔の作者で国際的に知られるが、彼の父は一平といい、洋画家であり、漫画家、母は岡本かの子で、小説家で歌人。【押谷盛利】
2008年10月20日 15:19 | パーマリンク
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