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任期は来年9月なのに

 命旦夕に迫るという言葉がある。「めい、たんせきに、せまる」と読む。
 命は「いのち」、旦夕は朝と夕べ。今にも命があぶない、という意味である。
 いまの政局を眺めていると、解散の時期が少しずれたが、それでも年内選挙が不可避といった状況である。11月に解散すれば、その時点で、いまの衆議院議員は職を解かれる。正確にいえば議員でなくなり、ただの人となる。
 任期は4年と法で決められているから解散がなくて任期いっぱいがんばれば来年の9月まで国会議員のバッジを外すことはない。
 ああ、それなのに、無情にも解散の風が激しい。いつ、解散があってもおかしくない状況であるから、任期途中とは言え、その生命は風前の灯火(ともしび)である。
 だから命旦夕に迫るというわけ。
◇4年も任期があるのになぜ解散するのか。議員心理からいえば、もったいない話であるが、そこがそれ生身の阿修羅の世界である。政権がうまく機能しなくて国民から厳しく批判されたり、野党の攻勢に政治的空白が生じたり、あるいは与党内部の対立が政権を揺さぶるなど幾つかの素因はあるが、結論的にいえば、政権の安定と長期化を求めて一番都合のいいチャンスをねらって総理が解散権を行使する。
◇小泉さんは5年半も政権に君臨してきたのに、小泉さんよりも政治的家系が秀れている安倍さんや福田さんが1年で転(こ)けてしまったのは腑(ふ)に落ちぬ、といぶかる人もあるはず。
 端的にいえば将たる器の格差ということになるが、政界という荒潮を乗り切る船頭としての力量と手腕の差によるといえよう。
 安倍内閣も福田内閣も強力な派バツ(森派―町村派)の支援で誕生したが、自派だけでなく他の派バツの応援も受けた。それなのに長続きしなかったのは、閣僚の質にもよるが、与党の執行部の補佐、協力関係のゆるみや違和感なども影響している。
 何よりも政策を国民に提示して、国会のみならず国民の信を得なければならぬが、そうした政策が外交上のスタンスの揺れや、大臣の醜聞、派バツ対立などで政権内部や与党から瓦解の萌芽を招くことが多い。
 安倍さんは理想を高く、よい仕事をしてきたが、それが与党から気に入られなかったのか、叩かれたり、ゆさぶられたり、その上、大臣の不信行為などが足を引っぱって人気を落とした。
 安倍さんが断行した教育改革は「愛国」を教育の根本に据えたし、公務員改革は骨抜きにされたものの、問題を提起し、官僚と、これに連帯する政治家の抵抗の現実を国民に知らしめた。
 ただ、小泉さんの如く、持論を突っぱねる度胸と信念、行動力に欠けた。だから解散権の行使どころか、腰抜けの哀れを見せた。
◇福田さんは借りものの大臣で、ひもつき政治に甘んじたが、それゆえに力も政策もなく、中国に受けがよいというだけでは国民の人気を高められなかった。それどころか、参院選の与党の敗北による、ねじれ国会の矛盾に苦しむこととなった。
 福田さんも安倍さん同様に肩の荷が重すぎたようで、人気の浮上にはほど遠く、解散はやりたくとも刀が抜けず、おっぽり出した。やはり「権力」といわれる通り「力」がなければ持続しない。国民の不幸でもある。【押谷盛利】

2008年10月18日 17:18 |


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