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幼児と高齢者への虐待

 仏教で末法の世を末世(まっせ)という。
 釈迦入滅後の仏法の衰えた世。転じて道義のすたれた世の中をいう。
 道義のすたれた人心の荒廃した世の中といえば地獄を思う。
 地獄は死後の苦界と思われがちだが、昔から「地獄極楽この世にあり」といわれるように生きているこの世で地獄の苦しみに泣く人が多い。
 仏教では、この世で悪いことをしたものが死後、エンマ大王の裁きによって鬼に刑罰を加えられ、八熱地獄、九寒地獄などの苦しみを受けるところと解釈されている。
 キリスト教では、神の教えに背いたもの、罪を犯して悔い改めない魂が陥って永遠の苦を受け、救われないという世界。
 イスラム教では、不信仰者や不正を行ったものが永劫の罪を受けるところ(大辞泉)。
◇わざわざ地獄を持ち出して、今の世の末世を憂うのは、われながら身の周辺の鬼畜にまさる犯罪や悲劇に怖気(おじけ)立っているからである。
 蟻(あり)1匹、虫けら一つでも殺せないのが人間である。仕事がら、生きものの命を絶たねばならぬ人は、念仏を称えながら、あるいはその霊を供養するほどである。
 毎日、至るところで起きている殺人事件。「人間よ、そなたは、ほんとに人間なのか」と疑いを持たねばならぬほど、鬼畜生まがいの悲惨な犯罪が続発している。
 その犯罪の中でも信じられぬのが「子殺し」「親殺し」である。
◇先日、長浜駅で「子どもの虐待はやめましょう」とのチラシを配っていたボランティアの団体があった。
 まるで「交通違反はやめましょう」と訴える安全週間の行事のようで、「なんと落ちるところまで落ちたもんだ」と情けない思いをしたことである。
 親は、わが子のためには、身を犠牲にしてもその生命を守るものである。食べたいものでもまず、一番に子のことを思う。「寝ていてもうちわの動く親心」、これが親さまである。遠く離れていても「今ごろはどうしているだろうか」と心配するのが親の慈悲心である。
 ああ、それなのに、虐待防止のキャンペーンをしなければ、とはまさに末世である。その虐待の頂点が「子殺し」である。
◇そうかと思うと、逆に「親殺し」のニュースも珍しくない。苦労して愛一筋に育てた子に殺される親の不運は思うだに身のけがよだつではないか。
 このところ、日本の社会問題の特徴は、高齢化と老後の健康であり、介護問題を含めて高齢者の人権や幸せへの関心が高まっている。
 年々の老人福祉月間を笑うがごとく、家庭内での高齢者虐待が増えている。
 6日、発表の厚生労働省の調査によると、2007年度の高齢者への虐待件数は家庭内で1万3273件(前年度比6%増)。介護施設内で62件(同15%増)。いずれの場合も被害者の8割が女性だった。家庭内虐待は4割が息子によるものだった。
 家庭内の被害者は77%が女性で、その40%が80歳代であった。認知症が4割あり、加害者は息子(41%)、夫(16%)、娘(15%)の順。
 虐待は暴力など身体的なもの(64%)、暴言など心理的なもの(38%)、介護放棄(28%)財産を奪うなど経済的虐待(26%)。
 施設内での虐待は加害者の84%が介護職員であった。
 虐待による死亡は27件、うち13件が介護者による殺人、7件が介護放棄による死亡。4件が心中だった。
◇弱きものは乳幼児、高齢病床者。いずれにしても物の溢れ、快適環境を追う現代社会が、はらからである弱者を虐待したり、殺したりする、この末世をどう救ったらよいのであろうか。【押谷盛利】

2008年10月09日 14:56 |


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