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さわやかな小泉退場

 元総理・小泉純一郎さんの退(ひ)きぎわは秋風に似て爽やかそのものである。
 神奈川の選挙区での講演で、総理在職中は全霊全魂、すべてを集中して国政に尽くしてきたと振り返り、辞めた時点で議員を辞めたい心境であったと報告している。しかし任期途中でもあるので、次の解散まで頑張ることにしたという。
 分かりやすく言えば燃えつきたことになる。燃えかすが、うろうろと現役にしがみついていれば政治の進化にブレーキをかけるだけで、国民に申しわけないという彼らしい信念の発露であり、政治家としての美学といえるかもしれない。
◇小泉さんは、さきの郵政民営化選挙で、自民党の総理経験者である中曽根、宮沢の両長老を年齢制限の枠によりあえて公認を外した。その結果、両氏は国会から身を退くことになったが、「老害」とささやかれる長老支配に穴を開ける意味で国民から歓迎された。
 今期限りで国会議員を辞めると宣言した彼の心中には、両先輩引退の経緯が去来したことであろう。
 政治家の出処進退の鮮やかさの要を自らの実践によってアピールしたといえるが、この一事を見ても彼が並々ならぬ政治家であることを証明した。
◇小泉さんは激しい政治家であった。彼の激しさは信念によるものであるが、同時に政治家は所信を発信して、国民とともに政策を遂行せねばならぬ、という民主的政治を貫いたといえる。彼は総理就任以前から、ずっと郵政民営化を叫び続けてきたが、その考えの根底にあったのは、「民で出来るものは官から民へ」の発想であった。
 このことは、歴代内閣の空念仏だった公務員改革の実践と不離一体にあり、さらに言えば官僚国家からの脱皮であった。
 彼が声を大にして叫び、かつ国民から支持されたのは、そういう意味での改革であり、彼が自民党改革に命をかけたのも同じである。
◇彼が燃えつきたと思われるのは郵政改革への歴史的選挙と、改革への切り込みであろう。改革は国民の圧倒的支持を得ながら、行政の端々では官僚の根強い抵抗にあった。第2の改革である道路公団の民営と分轄においても随所で抵抗されたが、その抵抗は法案成立過程の与党の非協力もしくはサボタージュに現れた。小泉改革を内部から崩すのは実は与党の保守体質であった。
 保守体質は古き自民党への郷愁であり、具体的には派バツと族議員政治への復活であった。小泉改革は国民の支持を得ながら党内では陰湿な抵抗にあった。その党内保守派の力がいかに大きいかは、安倍、福田両内閣を通じての派バツの復活と改革潰しの諸政策に現れていた。党内保守派は小泉時代は裏にこもって抵抗したが、小泉以後の自民党では公然と小泉批判が出るようになった。このような内在する抵抗勢力と戦いながら所信を遂行した小泉氏の手腕と力量は並の政治家の及ぶところではない。
 その最大の歴史的事件は平成17年8月の郵政改革解散と、9月総選挙の大勝利だった。命がけの選挙で80名を超す小泉チルドレンを生み、自民の大躍進を招いた。彼の眼には国民があった。今なお国民に人気のあるゆえんである。【押谷盛利】

2008年09月29日 15:35 |


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