工業用の毒米を食品に
江戸時代の近江商人は商人道として三方良しとする3つの柱を鑑(かがみ)とした。
3方とは、お客、売り手(商人)、取引の場所。つまり、売り手も買い手(消費者)も、そして、商売に関係するその土地の人々、これら3方が互いに利益にあずかる、これが商人道徳の基本であると教えた。
◇世の中が荒(すさ)みきったのか、人間が悪くなったのか、このごろは、金もうけのためにインチキする商人が「偽装」の名をほしいままに、しばしば摘発されたり、報道される。人道地に堕ちた、というべきだが、それを他人(ひと)ごとのように嘆いているだけでは世の中よくならない。
日本人は、陰で不満をこそこそいうが、表へ向かって発言したり、行政や政治家に対策を求める声を上げない。世に、はびこる悪(わる)は、それをいいことに、手を換え品を換え、客の不安をかき立てて偽装商品を流通させる。
◇日本人のお人好しを笑うかのように、外国からインチキ商品や汚染食品が輸入されているが、ここにきて痛感することは、知らぬがホトケの国民をいいことに、流通商人が公然とインチキ商品を流して巨利をむさぼり、それを見て見ぬふりをする役所側の怠慢である。
その最もいわましい事件が、今年早々問題になった中国の毒ギョーザ事件である。これは、外から運搬中に仕込まれたものではなく、製造過程で混入したものに他ならぬ、と科学者の見解があるにも拘わらず、日本の政府は、中国ペースに乗せられて、中国の責任追及をあいまいにしてきた。6月に入って、中国内で、毒ギョーザによる被害者が出ていることが分かりながら日本の外務大臣は、これを発表しなかった。ウヤムヤの好きな官僚の悪い体質が外国から侮りを受け、国内のインチキ業者をのさばらせる結果となった。
◇なにが、消費者行政だ。口先ばかり、いいことをいって、それで国民の健康や安心が図られるというのか。
バカも休み休みに言えと怒りのおさまらない昨今、今度は食べてはならない工業用の汚染米を、食料用として流した商人が現れた。その食べてはならぬ工業用の米が業者の手を通じて、焼酎(しょうちゅう)製造業者や菓子製造業者へと流れていたという。まさに聞き捨てならぬ間接殺人未遂事件である。
農林水産省の発表で明るみになったもので、米販売会社・三笠フーズ(大阪)が工業用と限られている事故米を食用と偽って転売していた。事故米からは、中国の毒ギョーザで問題となった有機リン系の農薬成分、メタミドホスや、発ガン性が指摘されているカビ毒のアフラトキシンB1が検出された。
同社の工場のある福岡県は、有害食品として回収命令を出したが、すでに転売した米は菓子や焼酎の原料として加工されたとみられている。
◇三笠フーズの冬木三男社長は、転用については、5、6年前からで、自分が指示したこと、もうけのため始めたこと、そして、帳簿も改ざんしたことを認めた。
メタミドホスが検出されたのは、もち米で03年度から政府が中国から輸入した。同社はこれまでに事故米800㌧を仕入れたが、食用と偽って販売し、未出荷分を除く295㌧が菓子など食品メーカーで加工された可能性がある、という。
またアフラトキシンが検出されたベトナム、米国、中国産の米9㌧も仕入れており、これらは焼酎会社や肥料会社に売られた。政府の輸入した事故米は、他にも落札されている可能性もあり、この際、その流通のごま化しを厳しく調査するとともに、三笠フーズから、どこへ売られ、どこで食品化されたかを明らかにする必要がある。偽食品が、国民の健康を傷つけることを警戒するがゆえに食品衛生法で規正しているわけであり、悪徳商人には厳罰こそ天誅である。【押谷盛利】
2008年09月08日 16:26 | パーマリンク
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