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五輪の「演出」に思う(見聞録)

 チベット自治区や新疆ウイグル自治区での騒乱、テロは、中国共産党の独裁政権による圧政を世界に改めて知らしめ、オリンピック開催国として疑問符を付けられた。しかし、いざ開幕すれば、新聞もテレビも五輪一色で、紙面には連日、メダルを獲得した日本人選手の笑顔が大きく掲載されている。
 開会式はそのスケールの大きさに、「100年の夢」という中国政府のメンツをかけた用意周到さに感心したが、後に、演出という名目の「偽装」が判明し、「中国らしさ」を見せ付けた。
 開会式で歌を披露した少女の歌声は、実は別の少女の声を当てた「口パク」だった。大きな足跡の形に打ち上げられた花火はCG(コンピューター・グラフィックス)だった。
 演出効果を高める目的だったのだろうが、海外メディアに「偽装」と騒がれた中国政府は、中国国内でこれに関する報道を規制している。
◇これらの「偽装」は、中国政府のなりふり構わぬ五輪への準備を振り返れば愛嬌のうち。
 例えば、まだ住民のいる古い街並みを無理やり破壊したり、地方からの陳情団を摘発し北京市外に追い出したり、化学薬品を積んだミサイルを発射して雨雲を消して見せたり―。
 こういう過去を見れば、口パク、CGなどは可愛い「演出」だろう。ただ、あれも、これも「演出」では、と勘ぐってしまいかねない。新記録が続出している競泳会場「ウォーターキューブ」のコースは実は50㍍ではなく、それより短いのでは、と冗談まじりに噂されたり…。
◇開幕式で気味の悪かったのは、56の民族衣装を着た子ども達の入場行進。多民族国家・中国を象徴する演出で、各民族の華やかな衣裳に、まだ見ぬ小数民族の故郷への旅情を誘われた。
 しかし、後に、大半が漢民族による「コスプレ」だったことが判明し、民族融和の合い言葉が政府の欺瞞であることを象徴付けた。
 中国では政府が認定している民族が56あり、人口の9割以上が漢族で、その他の55民族は少数派。チベットや新疆ウイグルのように、少数民族が集まる地域では限定的に自治権を認めているが、五輪を機にしたデモやテロを見る限り、自治とは名ばかりの圧政が住民を苦しめていたことを物語っている。
 ウイグル族やチベット族以外にも、小乗仏教を信仰するアチャン族、独自の文字を有し、祭祀や治療を行うシャーマンが存在するイ族、イスラム教徒のウズベキスタン族、キルギス族、銀の飾りを多用した民族衣装などで知られるミャオ族など多種多様な民族が暮らしている。
◇デモやテロが続く中国で、民族融和を掲げる五輪開会式の目玉の演出だったにもかかわらず、漢族がそれぞれの民族衣装をまとっていたのは、いずれ、少数民族を漢族に同化させるとのメッセージ性を「演出」しているのでは、と勘ぐりたくもなった。

2008年08月19日 17:54 |


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