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苦言と祝福の五輪(見聞録)

 きょう8日夜、いよいよ北京オリンピックが開幕する。世界205カ国の代表1万人以上が28競技302種目に挑戦する史上最大の規模となった。
 言論、宗教、民族への弾圧に反発するテロの不安を抱えるが、宗教も文化も世界観も異なる世界中の選手が参加するスポーツ祭典だけに、主催国の中国に、多様さを受け入れる「深さ」が少しでも身に付けば、と期待したい。
◇数年前、ちょうど反日デモがピークに達していた頃、北京を訪れた。天安門広場から南西2㌔ほどの場末の安宿を拠点に観光に繰り出したが、宿の前の通りは舗装されておらず、砂埃がひどく、近くの公衆便所からは悪臭が漂っていた。各地からの出稼ぎとみられる労働者が溢れ、すぐ近くの道路工事では、つるはしを振り下ろして地面を掘削していた。その様子に、まだ発展途上国なのだ、という印象を強く受けた。
 国際都市の上海に比べ、経済発展から取り残された古都というイメージを強く受け、かろうじて、壮麗な故宮とその前に広がる広大な天安門広場が、北京の威厳を保っているように感じたものだった。
 また、故宮のような歴史的遺産もさることながら、ごちゃごちゃとした通りに、各地からの出稼ぎ労働者や、観光に訪れる「おのぼりさん」が溢れているのも魅力だった。
 その古くて、汚らしくも、賑わいを感じた昔ながらの町並みは、オリンピックに合わせて解体され、真新しい建物に生まれ変わっていると聞いた。北京の魅力が半減した気分にもなるが、1964年の東京オリンピックでも、急ピッチで新しい建造物が建てられた。高速道路を日本橋の上に走らせるなど、今振り返れば、なりふりかまわぬ整備だったという気がしないでもない。
 国際社会への仲間入りのため、無理に背伸びするのが、オリンピック主催国の気持ちなのだろう。
◇きょう開幕のオリンピックは、一党独裁政権の主催とあって、読売、朝日、毎日、産経の主要4紙の社説も祝福ムード一色とはいかない。それぞれを紹介すると―。
 朝日は「限界への挑戦が始まる」「祭典が映す隣国の多難さ」の2本立て。前半は「戦争や貧困、環境問題。そんな国際社会の現実からいっとき離れて、世界の人々が4年に1度、スポーツで競い合う。そしてテレビ中継を通じて同じ時間と感動を共有する。そのことの意味は決して小さくない」と、一般論を掲載し、後半で「経済格差や腐敗、環境汚染など、急速な発展のゆがみが噴き出している。ウイグルやチベットの問題も内政の枠を超えた深刻さをはらむ」とし、「隣国の多難さを思う」と同情している。
 毎日も「開かれた中国へのステップに」「日本の新星の出現に期待」の2本立て。国際オリンピック委員会に中国側が約束した民主化、少数民族対策などの「宿題」を忠実に実行しなかったことが、今回の混乱を招いたと分析。取材規制に対しては「五輪開催都市とホスト国には素顔を全世界にさらけ出す覚悟と度量が求められる」と述べている。
 読売は「世界が中国を注視している」と題し、少数民族問題、経済・地域格差、役人の腐敗、人権問題、報道への様々な制限、記者への暴行、毒ギョーザに代表される食の安全、環境問題など、中国が内包する課題を列挙し、「平和裏に祭典が終わることを願っている」との選手の言葉を紹介。
 産経は「真の国際標準を学ぶ機会に」と題し、テロや邦人記者への暴行について「中国がかかえる民族問題の深刻さと、人権や報道の自由に対する当局の強権的姿勢を改めて世界に印象づけた」とした。「市民の人権や生活を守り、表現の自由を保障し、テロや暴動を起こさせない政治を行うことこそ五輪精神にかなう」「17日間の北京五輪が、中国の多くの人々が真の国際標準を知る機会になることを望む」と締めくくっている。

2008年08月08日 18:02 |


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