イチロー選手おめでとう
大リーグ・マリナーズのイチロー選手の日米通算3000本安打の達成おめでとう。
災害や通り魔殺人など不快なニュースの続くなか、暑さを吹っとばす明るい話題である。
記録男の日の当たる部分のみを眺めているわれわれだが、見えないところで黙々と己を鍛えている影の部分こそ称賛されるべきであり、生きたお手本とすべきであろう。
彼は決して華やかでもなく、饒舌でもない。チームに溶け込む人気ものでもない。アイドルの如く周囲に騒がれることもない。ただひたすら安打を狙い、守ってはホームランを外野飛球にしたり、ヒットによる2塁走者の生還を許さない強肩ぶりが敵味方の観衆をしびれさせた。
ことにアメリカ野球に旋風を起こしたのはその走塁の速さだった。彼の場合はバントが安打になったり、ショートゴロがヒットになるのは決して珍しいことではなかった。野手の捕球と一塁投球の僅かの時間を超える彼の足のスピードの勝利であった。
かつての日本のプロ野球で、世界のホームラン記録を塗り替えたのは王貞治氏(現ソフトバンク監督)だった。彼の打撃もまたイチロー同様、天才的な技術を持っていた。対戦チームの監督は彼の打撃記録から割り出して、その飛ぶ方向に守備システムを固めるための一時的な「王シフト」を開発した。王貞治は、その守備の裏をついて、相変わらず安打を量産した。
現在のイチローの場合も同様に、守る側は内野を浅く、特に3塁手は本塁近くまで進んで、彼のバント安打を警戒した。彼の場合、流し打ち、引っぱり、そのとき、そのときの投手の球や守備陣の位置を目にして、打法を縦横に切りかえた。
まさに打撃の職人の風貌だが、その自由自在のバットの振りや緩急、角度などは到底教科書で覚えたり、コーチの指導で上達したものではない。いわば持って生まれた資質に不断の研究と精進の集大成というべきである。
彼は練習の鬼であると同時に、他方、体調の自己管理にベストを尽くした。病気にならないため、ケガをしないため、人知れず、たゆみなく、生活に気を配っている。肉体こそ唯一の資本であることをわきまえ、決してスター顔に世俗の垢に身を汚さない。彼の球道一筋は、比叡山の名僧の千日回峰の荒行にたとえられよう。彼の努力はそのまま一つ一つが記録の更新でもあり、次なる大記録の一里塚でもある。われわれは彼の次なる4000本安打を期待し、さらに間近に迫っている8年間連続200本安打の達成を祈念するものである。
◇さて、日本のプロ野球は、中休みして、いよいよオールスター戦を迎える。今年のプロ野球は、セ・リーグが阪神、パ・リーグが西武の独走状況だが、相変わらず、外国人選手のいわゆる助っ人が勝敗の色を濃くしている。
国技である相撲がモンゴル他外国人にお株を奪われているのは歯がゆい話だが、若貴や千代富士、北の湖時代を知るものは、英雄出てこいと祈る気持ちである。
プロ野球も同様である。いまのところ、ホームラン王も打点王も外国人選手ばかりである。巨人の小笠原、阪神の金本、横浜の村田、中日の中村、楽天の山崎ら、ベテランが年齢を超えて活躍しているのは嬉しいが、彼らの領域を超える若い戦力の台頭がもどかしい。
その点、投手陣は、各チームとも素質のある新人や若手が開花しつつあるのは頼もしい。
みんな、暑い、と水に浸かって昼寝をしたいだろうが、打っていくら、投げていくらのプロである以上、ゼニを払っている客にそっぽを向かれぬためには1にも2にも練習あるのみ。それぞれのファンに汗を忘れさせる健闘を願ってやまない。【押谷盛利】
2008年07月31日 15:32 | パーマリンク
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