北朝鮮の深謀と日本
昨年(07)12月の韓国大統領選で李明博(イ・ミョンパク)氏が与党系候補を破って当選したことは画期的なことだった。世界の平和と民主主義の前進に寄与する意味でアメリカはもちろん、日本も大歓迎すべき結果だったが、なぜか日本のマスコミはそうした積極的評価をしぶった。
李大統領の選出は、国民がこれまで続いた金大中、廬武鉉両大統領の対北親善外交にノーを宣告したところに意味がある。
両氏による過去10年間の韓国政治は軸足を大きく北朝鮮に向けたものであり、北朝鮮への経済支援、観光開発、友好政策が顕著だった。そのゆきつくところ、北朝鮮との統一の前提ともいうべき南北連合システムの結成にあった。
◇これは北朝鮮の巧妙なる戦略で、双方対等の協議システムによって、朝鮮半島全体の政治を推進しようとするものであるが、実質的には協議体の構成メンバーの質の差により、北朝鮮主導の運営が明白であり、ゆくゆくは力(武力)による南北統一に向けられる。
力による南北統一とは北朝鮮の実力(軍事力)によって革命的に韓国の主権を北が握ることを意味する。
これは、かつてのベトナムを想起させる。ベトナムは北は中国、ロシアの支援を受ける共産党国家、南はアメリカの支援を受ける民主国家であった。
選挙による民主的手続きで、南北ベトナムの統一は不可能だと知った北は軍事力で南に侵攻して来た結果、それを排除する南ベトナム軍とその支援のアメリカ軍との戦争となった。
最終的には北軍が南を支配したが、その軍事的、政治的行動の中でひときわ目立ったのが南における北のスパイや工作員の活動であった。
◇これと似た構図を見せているのが現在の朝鮮半島の政治図である。
北は1950年の朝鮮戦争の失敗を教訓とし、さらにベトナムの統一軍事行動の成果を学んで、失敗の許されぬ革命の準備を進めている。
ベトナムにおいては、北は「南ベトナムの解放闘争」と呼んだ。資本主義の搾取から人民を解放するのだ、という口実だが、日本のマスコミや一部の市民団体は北の共産党の宣伝を丸受けして、「解放戦争」と叫び「ベトナムに平和を」と、日本国民の協力や支援を促した。
その組織の一つが「ベ平連(ベトナムに平和を市民連合)」だった。つまるところは、ベトナム共産革命の応援団だった。
◇いまの北朝鮮もまた南(韓国)を統一する口実に「南韓を解放する」と言っている。
解放とは勝手な言い分で、「南を武力で統一する」という意味である。
ただし、ベトナムと事情の異なるのは、南(韓国)の人民の民度が高いことと、経済的、文化的に北よりも遥かに秀れ豊かになっていることである。だから、解放するというスローガンが韓国民の腹に納得や賛成を呼ばないのである。
解放の声に乗ってこないので、それでは政権もろともに親北勢力で固め、ある時機をとらえて、韓国内で学生闘争と労組のゼネストを組織し、それに北の軍事力が支援する形の内乱状況の中で革命的統一を図るというのが目下の戦略である。
この戦略に協力してきたのが金大中政権であり、その後の廬武鉉政権であった。
しかし、韓国民の判断は冷静だった。親北政権反対の声を大統領選に結集した。
北の思惑は完全に外れたが、目下は、その巻き返し闘争が李政権を苦しめている。それが米牛肉反対の学生デモであり、今回、金剛山で起きた韓国人観光女性の射殺事件である。
北の深謀遠慮は、今後、どんな手を打つか、日本のマスコミや政治家がそれに利用されたりしてはならぬ。【押谷盛利】
2008年07月23日 17:12 | パーマリンク
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