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伊吹山再生の行方(見聞録)

 伊吹山の自然再生構想を考える滋賀県の「伊吹山自然再生協議会」はこれまでに2回の協議会を開いた。
 滋賀県は琵琶湖や河川の自然再生に取り組んだ経験はあるが、山岳部では初めての試み。環境省からの出向職員が核となって、国の支援を受けて協議会を立ち上げた。
◇協議会が目標に掲げるのは、第1に山頂周辺に広がる高山植物の群落地の維持、復元。「お花畑」と親しまれる一帯に外来植物が侵入したり、観光客や登山客が踏み荒らしたりで、被害が出ていることから、その対策。
 第2に景観問題。開発の規制、採石跡地の緑化に努め、草原や森林による新しい山容を創出。
 第3は、伊吹山と人が関わることによって自然環境の大切さを体感できる仕組み、体験型観光「エコツーリズム」の確立だ。
◇小欄が注目しているのは採石後の痛々しい姿をどうするのか、ということ。
 採石前の写真を見ると、伊吹山はなだらかな尾根を持つ均整のとれた美しい姿をしている。それが、昭和26年から始まった石灰石の採掘により、長浜から見て左側の尾根は切り取られたかのように、水平に削られている。
 初めて長浜に訪れた際、いびつな形をした山があるもんだ、との印象を受けた。後に採石の結果と知り、地域シンボルでもある伊吹山をよくもあそこまで…と感じたものだった。
◇石灰石はセメント材料として、ビルや道路、橋など近代的な街造りを支えてきた。伊吹山をはじめとする全国の山々が削られ、日本の経済発展の犠牲となった。
 ゆえに、協議会では山容の変化を憂う声が出ながらも、セメント原料の供給という社会的役割を考えると「やむを得ない」との感情が支配的だ。あの痛々しい姿を、「20世紀文化のモニュメント」と、近代史の遺産かのように語る委員もいた。セメント需要のある限り、たとえ、伊吹山での採石を中止しても、別の山で採石が進むだけ、との意見ももっともだ。
 業者側は採掘跡に高山植物を植えて緑化に取り組んで景観に配慮する一方、小学生などの現場見学を受け付け、社会的役割を訴えている。
 今後もあの平らな部分を掘り下げる方針らしいが、気になる話だ。
◇自然保護と経済発展をどう天秤にかけるのか。その答えが簡単に見つからないのは、先の洞爺湖サミットでも見られた通りだ。
 伊吹山自然再生協議会では、今まで公の場で取り上げられなかった採石問題に踏み込んだことで評価されよう。
 ところで、長浜や東浅井の住民は、借景としての伊吹山の現状をどう考えているのだろうか。自身の生活とは直結しない他所の問題と考えているなら、伊吹山は悲しむだろう。

2008年07月11日 15:50 |


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