拉致抜きの国交と利権
日本人が多数拉致されるなか、北朝鮮の食糧危機を人道上の問題として100万㌧のコメ支援を続けていた日本に対して、北朝鮮は何を狂ったのか、1998年、日本の上空を越えて三陸沖の太平洋へミサイルを打ち込んだ。
当然のことながら国交の正常化交渉はストップし、食糧支援を始め、北の船の出入りも凍結された。
その10年前の87年には北朝鮮工作員のテロ、大韓航空機爆破事件が起きた。1970年には日本の赤軍派学生9人による日航機よど号ハイジャック事件が記憶に新しい。
北朝鮮はハイジャック犯人らの面倒を見るばかりか、労働党の指令で彼ら若者の配偶者をあてがうため、さらなる日本人拉致を進め、拉致された日本女性を赤軍派の夫人とした。
また、この女性たちをスパイにして、ヨーロッパを舞台に、色仕掛けによる男性拉致をも働いた。
このような不愉快な事件を内含しながら他方、韓国においては工作員やスパイを通じて、親北世論を高めつつ、96年には潜水艦を韓国東海岸に送り銃撃戦を起こしている。
◇そういう北側の不誠実なテロ体質に眼をつむって、日朝国交へ前進を図ろうとする国会の一部有力政治家たちの本心は何か。まじめな日本人はみんな不信感を持つ。安倍前首相が「百害あって利権ありか」と批判したのはまさに、この国民の声を代弁しているのではないか。
◇ぼくは先に、インドネシアの戦後賠償問題に関わる政治家の利権と商社などの暗躍についてふれたが同じことは韓国との間の賠償経緯についてもいえる。
日韓条約は1965年調印された。日韓国交正常化の下準備交渉は51年から始まったが竹島問題などで難航した。
口火を切ったのは岸信介政権で、後に総理となった池田勇人、佐藤栄作らが協力した。これら官僚出身の政治家に対し、反対したのは大野伴睦や河野一郎ら党人派政治家だった。いずれも賠償金にまつわる巨額の利権の主導権争いが背景にある。
そうしたなか、双方の仲に立って調整機能を果たしたのが右翼の陰のリーダー児玉誉士夫だった。彼は韓国政界に強力なコネを持ち、それを背景に日韓交渉の舞台裏で活躍した。
彼は後の田中角栄時代、76年のロッキード事件にも陰の人として登場している。
当時の朴正煕大統領の密使が児玉邸を訪れ、その紹介で密使と大野伴睦が会談する。密使は間もなく児玉邸で、伊藤忠商事の瀬島とも会う。63年、日韓交渉は大きく前進し、韓国KCIA部長・金鍾泌と大平正芳外相との間で対韓賠償を無償3億ドル、有償2億ドル、計5億ドルで合意した。
◇韓国への賠償金5億ドルが決まるやたちまち、日本の三井、三菱、丸紅、住友、伊藤忠らの商社が受注とコネ工作に火花を散らす。
なにしろ、賠償は実物償還だから注文は先方でも支払いは日本政府だ。利権としての甘みはけた外れに大きい。
韓国側は、発電所や工場建設、道路整備など社会資本の導入を念頭におくから、各商社とも韓国政権への食い込みは必死である。
朴大統領以下、韓国の実力者は旧陸軍士官学校出身だから、陸士、陸大出身の瀬島龍三とは波長があい、しかもその背景が、党人派の大野伴睦、右翼の児玉誉士夫だから、インドネシア賠償同様、伊藤忠商事は有利なスタートを切った。
◇伊藤忠のソウル駐在員。小林勇一はソウルの近くに計画された嶺東火力発電所の契約寸前に起きた予想外の事件に驚く。
事件というのは、契約直前に朴政権中枢の幹部から「おれにも3%よこせ」の横やりが入ったからだ。契約のコミッション(バック・マージン)は、与党の財政委員長Kに4%払うことで合意していたから計算が狂ってきた。増加分は伊藤忠とメーカーの日立製作所が半々で泣いた。合計の7%は182万ドル。日本円で6億5000万円余。
◇いま、日本の親北政治家が拉致より、国交をと、変な動きを見せているのは、こうした北との賠償ビジネスが念頭にあるのでは。これが百害と利権の構図である(新潮文庫版・沈黙のファイル参照)。【押谷盛利】
2008年07月09日 16:53 | パーマリンク
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