第2の夕張市の危機(見聞録)
今、近江八幡市が揺れている。市立総合医療センターが生み出す赤字が市の財政を圧迫し、このまま放置すれば「数年後には第2の夕張市」になるとされているからだ。
市立総合医療センターは、市の財政負担を軽減するため、建設や運営に民間資本を活用する「PFI方式」を取り入れ、2006年10月に開業した。前市長が旗ふり役となり、日本初のモデルとして注目を浴びた。
大手ゼネコンの大林組が100%出資する民間会社SPCが病院を建設して建物を所有。給食や清掃、警備、滅菌など医療行為以外の業務を担当し、開院30年後に建物を市に無償譲渡するというもの。
市とSPCが結んだ契約の総額は682億5000万円にのぼるが、当時の試算では、市が独自に建設、運営するより出費を56億円減らせるはずだった。
◇医療センターの前身、市民病院は43年間の運営のうち、39年間黒字を維持し、自治体病院の優等生だった。
ところが、医療センターは開設して1年目の2007年度に、24億円の赤字を出した。市は基金8億5000万円を取り崩してセンターへ貸し付けるなど、資金繰りが悪化した。
専門家チームは、このまま放置すれば、2013年度末に債務が約70億円にまで膨らみ、市が財政再生団体に転落する恐れがある、と指摘している。
財政再生団体への転落は企業でいう倒産にあたり、夕張市のように国の管理下に置かれて、あらゆる住民サービスが犠牲になることを意味する。
◇26日夜、近江八幡市の文化会館で、地元住民有志による「近江八幡を救う会」が医療センター問題について市民集会を開いた。
会場に入りきれない市民がドアを開け放ち、通路に椅子を並べての熱気溢れる会となり、市民の関心の高さをうかがわせた。
会では、冨士谷英正市長が赤字問題の原因や改善策について解説した。
それによると、根本的な赤字の原因は、収入が予測よりも少なくても、SPCへの支払い額が契約で固定化されていること。さらに、前市長がSPCと結んだ契約の不透明さも指摘した。例えば▽建設費の30年間分の金利負担が99億円にのぼり、その利率は破格の5・37%▽所有権移転の手続きだけで3億4000万円▽発生していない修繕費2億円(年額)の支払い―など。
冨士谷市長は、SPCとの契約を解除して病院建物を買い取り、運営業務も市が担当する方針をSPC側に打診しているが、受け入れられず、弁護士同士の論争に発展していることを明らかにした。
◇民間資本の活用は、自治体の財政負担を軽減させるはずではなかったのか?
今回の医療センターの赤字化の最大の原因は、「日本初のPFI」との触れ込みに踊らされ、業者サイドの計画を十分に検証せず、採算ラインを度外視して豪華な病院を造ったためだ。
その責任は業者の提案を鵜呑みにした市と市議会にある。
「民間にできることは民間に」との流れは「小さな政府」を目指すうえで不可欠だが、どんぶり勘定の収支予測と業者任せの計画で、自治体がコントロール機能を失えば、税金が企業利益の犠牲にされかねない。
近江八幡を教訓とすべきだろう。
2008年06月27日 16:02 | パーマリンク
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