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公立病院の危機と市民

 医者が足らん、看護師が足らん、介護士も足らん、銭(ぜに)が足らん。足らん足らんで地方の病院はお手上げの形。
 病院は総合病院が建て前であるから内科、外科はもちろんのこと産科、精神科、なんでもござれのはずだが、それがおかしくなって開店休業の科もあれば、病棟があくびをしていたり、休床したり、いやはや、ご難のご時勢である。
 ご難なのは患者だけではない。肝心の病院も経営不振が悪循環すれば施設はあっても医療担当者がなく、雪だるま式の赤字で倒産廃業となりかねない。
◇なんで、そんなことになるんや。そう不思議がるのが素朴な人間の共通の疑問。
 医者は毎年、新しい玉子が孵化して新進気鋭が医療現場を活性化しているはずではないか。昔と違って、検査や治療もコンピューターや最新の電子器具の登場でスピードアップされているではないか。
 待遇も一般職と違って厚遇されるし、住宅その他についても援助、その他の特別なはからいも用意されている。
 病人が多くなりすぎて医師の絶対数が足りないのか。それとも医師が研究室に閉じこもって現場へ出ようとしないのか。税務申告の高額所得者は例年医師が独占しているではないか。
 など、など、医療の世界の門外漢は近年の公立病院の医師不足に頭をひねる。
◇正直な話、親方日の丸で、ゼニのこともヒマのことも考えずにお大尽のような、殿さまのような医師を保証しない限り、大方の公立病院は医師不足は避けられまい。そのゆきつく先は休科、休床、休業、廃業になりかねない。大変な問題である。
 その実態が知らされていないから、知らぬがほとけかもしれぬが、後期高齢者医療制度の不満どころの騒ぎでない。地方の人間は満足な医療を受ける機会をなくする恐れがあるからだ。
 そのよう見本が産科の先生の不足である。
◇どういうこっちゃこれは、一体全体、なにが起きているんや、と行政も議会も市民もみんな冷静に刻下の危機を分析しなくてはならぬ。
 一つは救急医療の伴う苛酷な勤務体制であろう。今、問題になっているのがコンビニ感覚の安易な救急受診の弊害である。
 このほかに、公立病院内を大手を振って歩く患者側の誤れる人権意識である。
 医師や看護師がびくびくとびびってしまうような言動があっても病院側は目をつむるなり、泣き寝入りすることもある。
 それにこのごろは一つミスが出たり、結果が芳しくなければ声を大にしての責任追及や補償問題、あげくの果ては法廷闘争などとなって、役所人間とみられる公立病院の医師は逃げにかかる。独立して開業する道をとる人、他府県の条件のよい私立病院を選択する人。
◇かくして、地方が医者ひでりになってゆくのは過疎化の末の限界集落並みであり、いまのうちに手を打って、居心地のよい雰囲気づくりをしなければならぬ。
 なんぼ、保険制度があっても肝心の医療機関が機能しなければ困るのはその地元の住民である。
 病院も市役所も臭いものにフタをせず、本気で対策を立てないと取り返しがつかなくなるのではないか。【押谷盛利】

2008年06月18日 16:08 |


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