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五輪と弾圧とプラン氏(見聞録)

 平和の祭典の盛り上げ役である聖火リレーが各地で妨害や抗議行動に遭い、イギリスのテレビ局は「さながら障害物競走」と揶揄した。
 ロンドンやパリでの大規模な抗議行動は、今度の北京オリンピックが平和の祭典とは名ばかりという印象を与え、サンフランシスコでの突然のルート変更は、聖火リレーの意義さえ失われたように感じられる。
 聖火を守るため幾重にも警察や大会関係者がリレー走者を取り囲み、屈強な中国人SPは、走者が胸につけた人権擁護バッジを「はずせ」と命じたり、「もっと聖火を高く掲げろ」と怒鳴ったり(11日付け産経)。
◇10日来日したダライ・ラマ14世は北京オリンピック支持を訴え、中国との対話路線を改めて強調した。
 しかし、一方の中国政府は、一連の抗議行動をダライ・ラマが扇動していると主張して、中国のマスコミもダライ・ラマと西欧諸国の対応を批判。
 そもそもの根本であるチベット民族への弾圧には触れずじまいだ。
 中国は世界経済に欠かせない存在となり、五輪を主催するまでに国力を豊かにしたが、それは経済的裕福さを身に付けただけであって、人権尊重や民主主義という視点では遅れに遅れている。
◇世界が中国の経済的影響力を恐れて、チベット弾圧をはじめとする人権問題に目をつむり、北京オリンピックを祝福するのは正しいのか。
 イギリス首相をはじめ、チェコ、ポーランド、ドイツなどの首相が開会式のボイコットを決めたことは、それぞれの国内の北京オリンピック反対世論に向けたガス抜きとの側面はあるものの、国際社会と中国政府に一定のアピールを示せるという点で評価されるだろう。
◇日本はどうだろうか。聖火リレーは、南米やアフリカ、中東などを経て、今月26日に長野に入る。長野でも抗議活動が行われる見通しだが、政治家や経済人が、今回のチベット騒乱、弾圧に対して、効果的なアクションを取れないのはどういうことか。
 10日のダライ・ラマの来日に対しても、日本政府は接触を避け、安倍晋三前首相の昭恵夫人との面会で茶を濁すだけだった。
◇話は変わるが、先日、米ニュージャージ州の病院でディス・プランという人物が65歳で亡くなった。
 ニューヨークタイムズ記者の助手としてカンボジアでクメール・ルージュ(ポル・ポト派)の武装蜂起などの取材に携わり、プノンペン陥落(1975年)後のポル・ポト政権下で、強制労働と虐殺の時代を生き抜いた。4人の兄弟は殺された。後にカンボジアを脱出して、アメリカに亡命。
 ポル・ポト派による大虐殺を描いた映画「キリングフィールド」のモデルともなった彼は、新聞社のカメラマンとして活動しながら、その生涯をかけて虐殺の事実を訴え続けた。
◇ポル・ポト派は中国政府の支援を受けた経緯を持つが、その張本人のポル・ポトはすでに死去し、生き証人のプラン氏もこの世を去った。
 それでも今、ダルフールでは中国関与による「民族浄化」が続き、チベットや新疆ウイグル自治区では弾圧への抗議の声が封じられている。虐殺は形を変え今も続いている。

2008年04月11日 17:45 |


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