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野口健氏がチベットを語る(見聞録)

 中国政府は5月1日からチベット自治区ラサへの旅行客の受け入れを再開する方針を示した。
 オリンピックまで4カ月を切り、国内の安定を国外にPRするのが狙いだろうが、3月14日の中国政府に反発する騒動以降、いったいどれだけのチベット人が殺され、拘束されたのだろうか。
◇登山家でチョモランマ(エベレストのチベット名)登頂をチベット、ネパール両コースから成功させた野口健氏が、自身のホームページでチベット問題を取り上げている。
 「永年に渡り中国に支配されチベットの文化が葬り去られようとしている時に命をなげうってでも中国の侵略を国際社会に訴え、そして救いを求めようとしている彼らの行為を一体誰が責められようか」と、今回の騒動に理解を示している。人権問題よりも中国との政治・経済の連携を重視する政治家や経済界、五輪オリンピック取材への中国政府の圧力を恐れる大手マスコミを尻目に、真っ向からこの問題に切り込み、注目を集めている。
◇野口氏は1996年にチョモランマに遠征して以来、毎年のようにチベット入りしているが、中国資本による相次ぐ開発に、ラサの町の姿が失われつつあることを憂い、「チベット人街特有のくねくねと入り込んだ路地裏はすっかり整地され、代わりに大通りはショッピングセンターに高級ホテル。走っている車はワーゲンやベンツ、BMWのような高級外車が増えた」と現状を語っている。
 ホテル、土産物屋、ショッピングセンターのオーナーの大半は漢民族。青海鉄道の開通で観光客が急増し、より漢民族の経済的支配が強まっている。
 「私は何度、中国の警察が街中でチベット人を木の棒で殴っている姿を見てきたことか。一部の観光産業に携わるチベット人には経済効果があったかもしれないが物価の上昇に伴い大半のチベット人は生活が苦しくなり、また経済的格差が生まれている」と語り、オリンピックのボイコットという選択肢が含まれることもやむをえない、と訴えている。
◇登山家といえば、2006年9月に中国、ネパール国境の峠でネパールに向けて歩いているチベット人に対して中国警備兵が発砲し、近くにいたルーマニア人の登山家がその様子を撮影。その映像がインターネットによって世界中に配信されたことは記憶に新しい。
◇中国の体質が変わらないまま北京オリンピックが成功すれば、チベット人への弾圧をはじめとする非人道的行為を、国際社会が「政治とスポーツは区別すべき」という建て前を「盾」に認めることになりはしまいか。
 そもそも、中国政府は聖火リレーをチョモランマ山頂で計画しているが、それこそチベットの中国化を内外に認知せしめる政治的パフォーマンスではないか。 
 野口氏は「チョモランマは私にとっての聖地でもあります。中国にとってタブー中のタブーであるチベット問題について発言を繰り返せば二度とチベットに入れなくなるかもしれない。(中略)私の故郷が一つ奪われてしまうかもしれない。極めてデリケートなテーマだけに正直、発言に躊躇もしたが、しかし、現場を知っている人間は逃げられない。そして語らないことは(弾圧に)加担する事と同じだ」と締めくくっている。

2008年04月04日 16:53 |


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