日銀総裁同意ならず
自民党はアホと違うか、ふと、そんな気持ちになったのはぼくだけではあるまい。
政権党という責任ある党がかりそめにも人の人格を棚ざらいして、否決されると分かりながらその人の同意人事案を提出した。
このところ連日、ニュースの核となっていた日銀の次期総裁人事のことである。
◇日銀は日本の金融界の総本山であるから人間で言えば心臓にたとえることのできる最重要の組織である。
時の政権や一部の財界に支配されることがあってはならないとの理念からその最高人事は国会の同意を得なければならない、と日銀法に規定している。
現在の福井俊彦総裁は、この19日に任期が切れるので、それまでに与野党協議がまとまればともかく、自民党があくまで現副総裁の武藤敏郎氏の昇格にこだわれば、19日以降、日銀総裁は空席となる。
◇12日の参院本会議は、提案された同意案件について、総裁の武藤氏、副総裁の2人のうち伊藤隆敏氏を不同意とし、白川方明副総裁に同意した。
衆院では13日採決するが、これは与党多数で3氏とも同意されよう。問題は国会のねじれ現象による収拾策だが、予算や内閣総理大臣を決める議決のように衆院の優越規定がないから野党の同意がない限り、総裁は空席という最悪の状況となる。
◇こんな話は、最初から分かりきっていることで、野党の主導権を握っているのは民主党であるから、その民主党が最初から同意しない、といっているのに、しゃにむに「武藤案」を固執するのは芸のない話である。
芸のないのは、自民党の執行部と福田総理の責任として笑われもしようし、信用を落とすが、巻きぞえを食って「よい」の「悪い」のと国民の前に棚ざらしされた武藤氏こそ迷惑千万である。
◇さて、民主党や他の野党が、なぜ武藤総裁を拒否するのであろうか。
国会レベルの話であるから、顔や学力や私生活などが問題ではない。強いて言えば武藤氏の経歴が気に食わないというのである。武藤氏は財務省(旧大蔵省)出身で、元財務事務次官という官僚中の最高エリートといえる。
その経歴が野党の反発を食っているという事実は逆に言えば、野党側の財務官僚に対するコンプレックスが見え見えである。
しかし、コンプレックスといえどもわれわれ国民の利害にある感情というレベルの質ではない。いわば、1980年代からのバブル景気と90年以降のバブル崩壊を通じての日本の財政金融政策の司令塔であった財務官僚への批判と反発である。
◇いま、戦後この方、実質的に日本を支配した大蔵省について、これを総括する紙数はないが、一番わかり易い例をあげるならば戦後の有力な政治家は大平、福田、宮沢氏ら元総理を筆頭に自民党幹部の多くは大蔵出身が目立つ。
旧大蔵省は日本国の台所のすべての金の出し入れを統括し、税金と歳出に強大な権益を行使した。各省庁は大蔵に三拝九拝して、その後塵に甘んじた。
都道府県においても補助金という金づるの元首を締められて、大蔵の支配下にひれ伏した。
その積年の財務独尊、独善の後遺症を癒すためにも財務官僚の日銀総裁に反発するわけである。根は深い。それを知らぬはバカである。【押谷盛利】
2008年03月13日 13:56 | パーマリンク
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