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小さくなる世界(見聞録)

 21日夜の虎姫町商工会の新春講演会で、読売テレビのキャスター・辛坊治郎氏が、政治や経済、テレビ番組の裏側について興味深い話を披露した。その中で、昨年、同氏が取材に訪れた南アジアの王国、ブータンの話題が印象に残った。
 ヒマラヤの山麓に位置するブータンは1974年まで鎖国を続け、外国文化の流入を拒否してきた世界最後の鎖国国家だった。鎖国時代は近代的経済体制もなく、GDPという指標で経済規模を測定することさえできない南アジアの最貧国だった。
 鎖国ゆえに自国の伝統や文化をそのままに残し、また、国王の方針で、国民の外出には日本の着物に似た民族衣裳の着用を義務付け、建物も伝統に則った建築を強いている。
 近年はこのブータンが注目を浴びている。というのも、法律で喫煙を禁じたり、GDPという経済指標中心の世界と距離を置き、「国民総幸福量(GNH)」という指標で、国民の幸せを導こうとの国策をとっているからだ。
◇辛坊氏の講演で興味深かったのは、西洋文化の流入を拒み、保守色が極端に濃いブータンで、英語教育や情報産業が急激に進展しているとの報告だ。
 鎖国を解除した国王は、このままでは世界から取り残されてしまうと、大改革に打って出た。
 まず、国際標準言語の英語力を養成するため、全小学校にアメリカ、イギリス、オーストラリア人の教師を招き、英語教育を徹底させた。その結果、今では30歳以下の国民のほとんどが英語を話せる。
 実は同国には、20もの言語が混在して国民同士がコミュニケーションを取れないほど複雑な言語体系だが、英語の定着で同国の第一公用語となった。
◇では、その英語能力をヒマラヤの山麓という辺境の地で、どう生かしているのか?
 それは、IT技術による産業振興で、イギリス、オーストラリア、アメリカの企業とインターネットで接続し、各国の企業から仕事を請け負っている。
 辛坊氏の取材によると、例えば銀行の金融商品の斡旋。イギリスの銀行の商品をイギリス人に売り込む仕事なのだが、セールス電話はインターネット網を通してブータンから行っている。
 セールスの電話を受けた当のイギリス人は、まさか電話の向こう側に、ヘッドホンとマイクを付けたブータン人がいるとは夢にも思わないだろう。
 さらに、イギリスで8時間の営業が終われば、今度はアメリカで8時間の営業、そしてその後にオーストラリアで、という具合に、時差を生かして1日3交替制で仕事をするわけ。
◇英語教育が徹底された国民はそういう知的産業で働き、道路工事などの肉体労働はインド人ら出稼ぎ労働者にまかせている。鎖国時代、自給自足の極貧生活だった国民の生活は向上し、国民1人当たりのGDPはインドの3倍にまで成長しているという。
◇近年まで鎖国を続け「秘境」「桃源郷」などと呼ばれたブータンでさえ、英語とIT技術を巧みに駆使してグローバル化の波に乗り遅れまいと、国家計画を改めた。IT技術が世界を確実に小さくしていることを改めて感じた講演だった。

2008年01月22日 14:13 |


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