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国境について考える(見聞録)

 世界のあちこちを旅行していて、そのつど何かと感慨深げになるのは、国境を越える瞬間。
 島国の日本では、飛行機の移動で、いつの間にか国境を越えているが、大陸の国々では、車やバス、列車、または徒歩など、陸路で国境を越えることが多い。
 国境通過は、まず滞在国の移民局で出国手続きをして、国境を越え、渡航先の移民局で入国手続きをするが、パスポートやビザ(入国許可証)のチェックだけでなく、麻薬などの違法所持や、爆発物はないかと、荷物検査もあるのが通例。
 小欄の経験上、日本人へのチェックは甘いが、国際上、何かと課題を抱える国は渡航者の国籍を問わず、審査や荷物検査が厳しい。
 過去にイスラエルを訪れたときは、度重なる荷物チェックだけでなく、渡航目的、宿泊予定のホテルなどを複数の入管職員に延々と質問され、うんざりした。職員が小欄のブーツの底に挟まった小石をピンセットで一つ一つ取り除いてチェックする様子は、テロと隣り合わせのお国柄を代弁していた。
 イランを訪れた時にはイスラエル入国スタンプを隠すためパスポートを新調したが、過去の渡航歴など質問責めにあった。
◇国境管理と出入国管理の厳格さは、その国の防犯、防衛の面からはしごく当然のことだが、国境を無くそうとの動きもある。ヨーロッパ連合(EU)だ。
 十数年前、ヨーロッパ周遊旅行に出掛けた際は、国を移るたびに、出入国審査を受け、パスポートはすぐにスタンプでいっぱいになったものだが、今のヨーロッパでは、国境審査がなくなり移動が容易になったうえ、通貨の統合で両替の手間が省けた。
 しかし、過去のような国境越えの感動は薄れ、同一国内を移動しているような錯覚に陥る。かろうじて言語の違いが国の違いを感じさせてくれる。
◇EUの前身は1951年の「ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体」にさかのぼる。これはフランスや西ドイツなど6カ国が鉄と石炭を国際管理するために始まった。これらの鉱物資源は国境をまたいで分布し、過去に紛争の火種となっていたからだ。
 58年には「ヨーロッパ経済共同体」と「ヨーロッパ原子力共同体」を発足させ、次第に協力分野を増やし、1967年には3共同体をまとめた「ヨーロッパ共同体(EC)」を設立した。徐々に加盟国が増大し、現在は経済だけでなく、政治、軍事などあらゆる分野での統合を目指すEUに進化した。
 現在27カ国が加盟し、EU内ではカネ、モノ、人の移動の自由が保障され、国境でのパスポートチェックや税関が廃止され、統合通貨ユーロは今年で導入9年目。
 ヨーロッパ市場の統合による企業間の競争力強化で、経済成長は著しく、ユーロの価値は上昇。導入当初の1ユーロ100円程度が、現在は160円にまで高まり、世界標準マネーとしての地位を確立した。
◇もともとは、経済分野での共同体を目指したヨーロッパが、なぜ、単一国家的統合を目指しているのだろうか?
 ヨーロッパの歴史は国家間の戦争に明け暮れ、20世紀には2度の大戦で隣国同士が殺し合った。その暗い経験から、再び戦争を起こさないために各国が協調し、平和への道を歩むことを最終目標にしたのだ。
 キリスト教という共通の宗教観はありながらも、言語、通貨をはじめ、文化も風習も異なり、それを統一するのは並大抵のことではない。
 だが、各国首脳は崇高な使命感を持ち、自国の利害にとらわれずヨーロッパ地域の将来を見据え、粘り強い交渉を続け、これまでに各国の経済基盤である通貨を廃止し、国境審査を解消した。
 その先見性と努力を我々も見習うべきだろう。

2008年01月18日 15:12 |


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