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松坂、中村、円楽さんら

 人生は明暗を織りなす織物のようなもので、いろいろな変化があって面白い。
 しかし、面白い、というのは他人行儀で、側から人さまを見ている立場といえる。本人にとっては死ぬか生きるかの、どたん場の苦しみにあえいでいるときもあり、必ずしも首尾上々、花満開というばかりではない。
◇朝な夕な新聞やテレビのニュースを見ていると、そこに人生の明暗がクローズアップされていて、破顔することもあれば涙することもある。
 例えば、これは2月26日付の産経新聞スポーツ欄である。何十億円の金の生る木の松坂投手が、米大リーグのキャンプで、英雄気取りの評価を受けている。球種などが分かるように投げたにも拘わらず、44球のうち、安打性はわずかに1本。チェンジアップの切れのよさをアピールした。コーチも打者も舌を巻くほどだったというから、実戦での活躍が見もの。
 同じ欄に阪神から大リーグ入りした井川投手の評判もすごい。本塁打王4度の強打者ロドリゲスがその印象を問われて「15勝できる」と、その威力のある左腕を絶賛した。トリノ監督は「手元で思ったより速くなる。ほとんどの左投手より球に力がある」と、本番への確かな歩みに信頼感を寄せている。
◇ところが、その同じページに、かつてのパ・リーグの最強打者・中村紀洋の中日入りが報じられた。2000年といえば7年前だがその年、近鉄で39本塁打、110打点で二冠、01年は132打点で2年連続の打点王。05年に米大リーグ、06年オリックスで日本へ。そして今年はどこからも声がかからなかったが、どたん場で、中日の落合監督に拾われた。それも2軍戦だけに出場できる育成選手として。
 その契約年俸は、昨季の2億円から50分の1の大幅ダウン。高校生以下の400万円。
 それでも、本人の中村選手は、「やっとユニホームが着られる。野球小僧という、初心に返って野球ができる喜びを感謝したい」と嬉しさいっぱいで語っている。
 「お金じゃない。ただ野球がしたい」と、いじらしい言葉が伝えられているが、かつての栄光の時代を思えば、その立場は、横綱とフンドシかつぎの差であり、口惜しさは煮えくり返る思いであろうが、それが現実であり、彼のわずか数年間の野球人生の明暗である。1軍へ這い上がって、再び新聞活字になるか、ならないか、はこれからの努力次第であろう。
◇人生の明暗は野球に限らない。25日の晩、テレビで落語の名人・円楽さんの引退の弁を聞いて、いとしいやら、淋しいやら、複雑な気分になった。テレビのお笑い番組「笑点」で、長い間、司会をしていたが、病気には勝てなかった。脳梗塞から立ち直って、一度は高座に復帰したが、人工透析の病気もあって、だんだん口演がしにくくなっていた。
 高座で立ち往生することはなかったが、納得のいく芸が出せず、このまま続ければ恥じの上塗りだとばかり、この日、トリを40分以上つとめた後、いさぎよく聴衆の前で引退を宣言した。引退の言葉を聞いたが、たて板に水の如き落語家の弁とは裏腹に言いにくそうに言葉を選んでいた。口が生命の落語家である以上、引退は阻止しようがない。しかし、みんな、だれもが通る暗の人生であり、早いか遅いかの違いだけである。
 大臣であれ、議員であれ、知事であれ、市長であれ、あるいは日本を動かす大会社の社長であっても人はみんな明と暗の糸を織ってゆく。できれば春の日差しのような明るく、温かいページを綴ってゆきたいものであるが。

2007年02月26日 14:12 |


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過去の時評


  • 1月 26日(金)  【グラスギャラリー・マヌー】
     ガラスのお雛様展(~3月4日)
  • 2月 10日(土)  【大通寺】
     馬酔木展(2月10日~)
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