病院にも、ひこにゃん効果を(見聞録)
大河ドラマ「功名が辻」の放映に合わせて、昨年1月から11月にかけて長浜市を主会場に開かれた「北近江一豊・千代博覧会」は大成功だった。期間中の観光客の消費は前年の160億円を上回る200億円に達し、差し引き40億円の経済効果があったというから、大河ドラマが観光地に与える影響力の大きさが実感できる。
このイベントを支えたのは、ガイド役や紙芝居公演への協力、裏方に徹した市民ボランティア。観光客をもてなし、楽しませようとする気遣いが好評だった。また、着物大園遊会に大河ドラマの主演を務めた仲間由紀恵さんを招いたり、ラジオ局の開設イベントに同じく女優の乙葉さんを招待するなど、イベント関係者の手腕も光った。
実行委員会は最終的に約3000万円の剰余金を計上し、今後の観光振興のためにと、長浜市と曳山文化協会、大通寺に寄付した。曳山祭りを支えるため脈々と続く町衆の心意気、きっぷの良さを感じさせる。
◇国宝彦根城を擁する彦根市では3月21日から築城400年祭が開かれるが、そのマスコット・キャラクター「ひこにゃん」が大人気だ。「井伊の赤備え」の兜をかぶった白い猫なのだが、その緊張感のない「ゆるい」顔つきと、丸い体系、短い足などが若い女性から絶大な支持を受けている。
ぬいぐるみ、携帯ストラップ、まんじゅう、ネクタイピンなど関連グッズが続々と売り出され、サンライズ出版が昨年末に出版した絵本は約1カ月で初版3000部を完売するなど「ひこにゃん・ばぶる」の様相。400年祭のPRに熱心な市民は、ひこにゃんをかたどったバッヂを胸に付けて仕事に励んでおり、その姿は銀行や役所に行けば見ることができる。
◇彦根と猫のつながりは、2代目藩主・井伊直孝の時代に遡る。舞台は江戸の貧乏寺の豪徳寺。直孝が鷹狩りを楽しんだ帰路、門前で白猫の手を挙げて招く仕草につられて、寺を訪ねたところ、突然の雷雨。偶然にも猫のおかげで夕立を避けられ、また、その猫を我が子のように可愛がっていた住職の説法にも魅了された。これが井伊家との縁となり、今では井伊直弼の墓所としても知られている。
◇人気を集めるひこにゃんだが、築城400年祭実行委員会は、関連グッズの販売元から使用料を一切徴収していない。「400年祭のPRになるんなら、自由に使って欲しい」からだそうだ。いくらか使用料収入があれば、資金面で観光にも寄与できたかもしれないが、そういったところは、井伊家の伝統を受け継ぐ太っ腹の殿様文化なのだろうか。
ひこにゃんによる先行PRを追い風に、祭りを成功に導きたい彦根市は関連予算約3億円を3月議会に提案する。開幕初日から、アカデミー賞を受賞した世界的衣装デザイナー・ワダエミさんの作品展や、井伊家14代を紹介する企画展、そして城内での結婚式と、催しは目白押し。
しかし、行政サイドの意気込みや、ひこにゃん人気とは裏腹に、肝心の「築城400年祭」の中身については浸透がイマひとつで、市民の関心の高まりも気がかり。
◇今、彦根市は財政事情の悪化で、実質公債費比率は県内最悪となっている。さらに、5年前に新築したばかりの市立病院で産婦人科医を確保できずに3月末から分娩制限するという大失態。そんな中、3億円もの大金を注ぎ込んでイベントを開催するのだから、市民の共感を呼び、一定の経済効果を上げなければならない。
もっとも、市立病院の失態で大迷惑を被っている妊婦や、これから結婚しようとする市民にとっては、築城400年を祝っている場合じゃないのかもしれない。この際、ひこにゃんグッズの売上金を活用して市立病院に産婦人科医を招いてはどうだろうか。女性に人気のあるひこにゃんの手を借りよう―。
2007年02月23日 14:50 | パーマリンク
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