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「焼き」を入れること

 公務員の不祥事件が報道されるたび、国民の不信感は募ってゆくが、一方で財政が厳しく夕張市のように赤字に転落して政府の管理下に置かれる不安な市町の多いことも伝えられる。
 借金苦で困っていながら、他方で、税金をつまみ食いしたり、無駄な出費を続けている地方自治体、一体どうなっているのか。心ある国民は、その刷新がいつになったら出来るのか。われわれの代表である議員は県会にも市、町にもいるはずだが、綱紀粛正でかがみとなるような議会活動を聞くことがない。
 住民のいらいらは怒りを通り超して政治不信につながってゆく。
 このごろ、問題になっている子どもの給食費の未払いや公営住宅の家賃未払いもそうした行政の乱れのなかの副産物といえぬこともない。
◇ぼくが、滋賀夕刊でそうした公務員の不祥事件を批判したところ、読者の一人が「焼きを入れんとなおらんのと違うか」と笑いながら電話をくれた。
 「焼き」とは刀鍛冶師が刀をつくるときの火の入れ方で、鋼(はがね)を真赤に焼いて、それを鉄槌で叩きながら鍛えてゆき、叩いた後、水で冷やし、再び焼いて、叩き鍛える。
 焼きが過剰になると「焼きがまわる」といって切れ味が悪くなる。切れ味をよくするには適当な焼きが必要だが、そのコツは刀鍛冶師の腕である。
 われわれの使う言葉はそれをヒントにしたもので、「焼きが回る」は火の入れすぎで、切れ味が悪くなる。切れ味が悪いというのは鈍いことを意味する。
 仕事でどじを踏んだり、さっさと出来ないときに、それを批判して「焼きが回る」という。
◇「焼きを入れる」はその反対で、焼きが充分入っていないから切れ味が悪いのだ。しっかり仕事が出来るよう鍛え直さねばならぬ。そこで「焼きを入れねばならぬ」という国民の怒りになってゆく。
 公務員は国家公務員、地方公務員を問わず、国民に奉仕することが前提であり、その職分については倫理などを持ち出すまでもなく、小学生でも納得できることばかりである。
◇仕事をさぼったり、長期にずる休みしても給料はあたりますよ、とは書いていない。私情をはさんで賄賂を受け、特定の人の利益を図ってもよい、とも書いていない。
 インチキの領収書で裏金をつくり、それを貯めて職員の飲み食いに使ったり、ボーナスのように、分配してもよい、とも書いていない。
 入札のときに談合のはからいをしたり、予定価格を教えて、特定の人を利してもよい、とも書いていない。
◇だから、学校の先生は公務員の不祥事件を中学生や小学生に話したがらない。
 話すと、生徒たちは「なんや、大人たちは口先で、いいことを、えらそうに言いながら、していることは反道徳なことばかり」といって道徳を教えても茶化してしまうからだ。
 子供たちに、ろくでもないことを知らせるとそれが逆になって、政治不信を呼んだり、大人社会をバカにしたり、決して心の衛生にプラスにしないからである。
◇寿命が伸びたとか、物が豊かで、福祉社会が進んでいるとか、人間の文化生活が向上しているとか、確かに一面では結構な世の中だとは思うが、明けても暮れても役所の不祥事や無駄づかいがおさまらず、大都市から田舎町に至るまで殺人や凶悪犯罪が起こる現実に目を据えるとき「なんと悲しや、人間崩壊の道をたどってゆくのか」とぞっとするのである。
 どうしたら「焼き」を入れることができるのか。議員先生に聞きたいところである。

2007年02月08日 13:43 |


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