末期現象と母性の愛
東京の歯科医一家で、歯科予備校生の武藤勇貴容疑者が妹の短大生・亜澄さんを殺して、遺体をバラバラに切断した事件は猟奇じみて気分が悪くなったが、同様の殺人と遺体切断が同じく東京で発生した。
今度のは、会社員の三橋祐輔さんが妻の歌織容疑者に殺され、遺体は切断された。夫婦喧嘩は犬も食わぬ、というが、この夫婦はまだ若いのに、喧嘩に明け暮れて、名は夫婦でも実体は他人に近かった。女は夫の暴力に耐えられなくなった、と言い、やられる前にやったのかもしれないが、その結果、長い刑務所暮らしをしなければならず、あたら30歳の花の人生を壊してしまった。おろかとしか言いようがないが、是か非か、かくすればかくなる、などの判断や常識が働けば、こんな大それた事件を起こすはずがない。
不幸といえば不幸、哀れといえば哀れだが、そういうあり得べからざることが起こり、想定外の事件を起こすのが人間であり、人間界である。
◇歯科医大をすべってばかりで、最後に妹を殺した青年は成人したばかりの花の21歳である。歯科医が人生の目的だったかもしれないが、殺人の結果、これまた長い刑務所暮らしをするとなれば、すべての夢は川の流れの泡よりはかない。なんで、そんなバカなことを、と悲しむのは、ドロボウを捕らえて、縄をなうのと同じで、とり返しはつかない。
◇人間には、太古の昔から自己保存と自己防衛の本能が備わっている。
そのために食を漁(あさ)るし、生命の危険を避けるため安全に心がけるし、万一のときは戦う。また分身を育て、発展させるための子をもうける。
自己保存と自己防衛のために、絶えず、食糧を確保し、人間社会の生存競争にあって、常に優位、勝者の道を歩もうと腐心する。
力を鼓舞し、身を装(よそお)う。賢明でありたい、美しくありたい、若くありたい、との願望も生まれながらにしてインプットされている。
そうした人間の本性を完璧な城にするため、神さまは、補助的にいろいろな心象作用を付加された。
負けん気、正義感、思いやり、勇気、美への憧れ、敵愾(がい)心、嫉妬心、猜疑心、などがこれであり、いずれも城を守る外堀、内堀の役割を果たす。
◇このような自己保存、自己防衛のための、さまざまな要素がからみあい、複雑に反映しながら、人間は自己完成をたどるのだが、たまたま、その働きが均衡を逸したり、あるいは機能しなかったり、脳神経が狂ったりするとき、想定外の事件が起き、社会的なショッキングニュースとなる。
それは、あってはならないことであるが、神ならぬ身の人間界であるから、絶無というわけにはゆかぬ。
いかにして、あってはならないことが、起きないようにするか。それが政治であり、道徳であり、教育であるが、残念ながら、それもこれもいびつ現象を迎えている。
ひらたく言えば末期現象に限りなく近づいてきたと思えばよい。
◇文明の利器を十二分に活用し、無限とも思えるほどの物質の豊かさに酔っているわれわれは、その結果、天なるもの、神なるものの崇高さ、偉大さを忘れて、己れを反省し、神や自然に感謝することをしなくなった。
精神の砂漠化が進行し、併せて、生活環境のもたらすもろもろの汚染で、脳神経のほか、肉体がおかしくなってきた。
生き残りたいもの、神の御心に帰依するものは、いまからでも遅くない。人間の原点に立ち返ることである、それは文明への反省であり、わが子に対する母性の裸の愛情であり、農耕社会の祈りである。
2007年01月15日 13:40 | パーマリンク
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