不二家と富士、藤の花
洋菓子の大手メーカー・不二家の再建が危ぶまれている。賞味期限の過ぎた材料や規制値をはるかに超えた細菌の食品などが露見して世間の指弾を受けているのは身から出た錆で寸分の同情もない。
食は主食であろうと、副食であろうと、あるいは「し好品」や「おやつ」の類であろうと、口にするものであるから、健康に有害と分かれば拒否反応が強くて当然であろう。
逆に健康によい、との情報が伝われば、器具であれ、飲み物であれ、野菜・果物、なんでも飛びつくのが現代人の心理である。ことほどさように、今は健康の受難期である。長寿国を自慢しながら、病気におびえて、クスリ漬けの生活を強いられる。こっけいといえば、こっけいだが、そういう社会であればあるほど、国民の自衛心は強い。
◇大手メーカーの製品であろうと、あるいはうまくて安価であろうと、食品衛生法に反し、市場へ出してはならぬものを販売したとあれば、行政上の処分はもちろん、国民の総スカンを食うのは当たり前の話。
一たん落とした信用は、ちょっとや、そっとでは回復しない。信用は宝である、といわれ、それを高め、保持することが商法の第一歩であることを思えば、今回の不二家の不祥事は決して他人(ひと)ごとではない。
◇不二家の創業者が、どんな理想を抱いて、この屋号を社名にしたか。恐らく二つとない日本一のメーカーを夢見たのであろう。その情熱と努力が報われて大手メーカーに成長したが、創業者の頭の中には、日本一のイメージの中に富士山があったと思われる。富士山は日本人の憧れの山であり品格と美の象徴でもある。たまたま発音が「ふじ」であるから、縁をかついで、不二の社名や商品名に登用するようになった。
同じ洋菓子メーカーに「不二屋」がある。また、不二、富士のほかに音感を重んじて、藤(ふじ)を用いるのもある。
藤は藤原氏の藤で、日本の貴族社会の老舗(しにせ)であるほか、藤の花の色彩や房、枝垂(しだ)れの風情などから、日本人好みのネーミングに多用されている。
思いつくまま、姓を例示すれば、藤原、藤田、藤川、藤森、藤倉、藤堂、藤中、藤尾、藤崎、藤岡、藤谷、藤井(居)、まだまだあるかもしれない。これらの姓は藤氏とのつながりがあるか、それへのあやかりの願望か、どちらかであろうが、いずれにしても「ふじ」という語感が重視され、企業名などに用いられるのは、日本人の縁を大事にする心理といえよう。
◇ところで、不二の不は否定の不で英語のノー(NO)に似ている。今はあまり用いぬが、昔の人は手紙の終わりに「敬具」の代わりに「不一」と書くことがあった。十分に意を尽くせていないので「失礼しました」といった意味の謙遜の言葉である。
不思議は、想像だに出来ぬ、考え及ばないという驚きの声に使用する。
不用意は、思いつき、思慮を欠く発言などに登場する。
「女性は子を産む機械」と言った大臣が反発をくらっているが、比喩(ひゆ)のつもりで、話を分かりやすく説明したつもりらしい。あとで取り消したところを見ると、不用意発言を認めたのであろう。
「言葉狩り」といって、言葉づかいにスパイのような感覚を走らせる向きもあるが、自由にものの言えるのが自由国家の有り難さである。話を面白くするため、きわどいたとえ話やご法度といわれる言葉づかいもあり、いちいち、やり玉に上げれば、もの言えば、口びる寒しの独裁国家になりかねない。不当発言と不用意発言の違い、その判断がいわゆる良識である。
2007年01月29日 13:15 | パーマリンク
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