おこないの神事考察
湖北地方の1月、2月は氏神さんの「おこない」月である。おこないは神事と書くこともあるが、大辞泉は「近畿地方を中心に年頭または春先に行われる祈祷行事。主に寺堂などで行われるが、元来は農事祈願の神事」と説明している。
◇おこないの歴史はさだかでないが、各集落で行われる伝統神事で、その形式も多種多様である。ただ各集落を通じ共通しているのは、おこないを執行する当番、組が年間を通じて氏神の管理や祭事に奉仕することである。
おこないは、1年間の奉仕の総決算で、これが無事終われば、おこない番は次の当番(組)に引き継がれる。
◇おこないは神事とはいうものの、いわゆる神社庁などが取り仕切っている春秋の祭り、その他の恒例の祭事とは全く別で、極めて民俗的、土俗的、原始的色彩が濃く、その点では農耕民族にふさわしい初春のイベントと言えるのではないか。
◇祭にあらずして神事(おこない)とはこれいかに、と疑問を持つ向きもあろうが、農耕民族である日本人全体が関わっているのではなく、近畿を中心とする限られた地域のみの伝統行事である点がこれの歴史を解明する鍵かもしれない。一説には、京都御所の平安と国家の鎮護を祈るための鬼門除(よ)けともいわれる。
おこないが近畿を中心として、色濃く伝わっていることは奈良朝から平安朝にかけての皇室の繁栄を祈る庶民の志が氏神信仰と結びついた可能性は否定できない。
◇それでは、おこないの中身は何か。集落あげての初春の神事といっても、何をするのか、一般の人には分かりにくい。一般にはその年の稲作、養蚕の豊作を祈る神事とされているが、いわゆる祭礼ではないから神官が采配を振ることはない。
あくまでも、当番組が奉仕する神事で、各地共通するのは大きな鏡餅を氏神に供え、組のものたちは家族みんなが参加して、海の幸、野の幸、山の幸で豪華な宴(うたげ)を設け、歌ったり、踊ったりの余興で平素の疲れを癒し、明日へのファイトをかき立てる。
◇おこないは、その地域に伝わる独特の伝統行事であるから、期間も3日、5日、1週間といったふうにばらばらであり、内容も、やり方も千差万別である。
鏡餅を供えるにも闇夜に松明(たいまつ)をかざして、多くのひとがお練りしながら氏神へ詣でることもある。
また前日か2日前ぐらいに餅つきの行事があり、女人ご法度(はっと)で、若い衆が担当することが平均的である。このほか、期間中、当番組の責任者の家に「繭飾り(繭玉)」と称して、木の枝に小さく固めた餅を花のようにたくさん結びつけて床に飾っておき、本日の餅供(す)え式に、これを氏神に供える。繭玉は「餅花」ともいう。
また、ところによっては、期間中、深夜に組のものが、鐘、太鼓、笛を鳴らして氏神詣でを続け、その都度、海、山、野の幸を供える。
◇いずれにしても祈願祭と村人の交歓、レクレーション、そして村人の氏神を中心とする仲良し、結束、平和、無事を祈る手作りのまつりといえよう。
餅花が登場するのは、往時の養蚕の重要性をうかがわせて興味がつきない。
2007年01月25日 14:00 | パーマリンク
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