滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



テレビが少子化の因

 ものは言いよう。理屈はどこからでもつくが、長い年月を生きている警句や俚言、ことわざの類は反面教師として、われわれの生活に役立ち、生きゆく糧として存在感を失わない。
 日本でテレビが普及し始めたのは1955年(昭和30)以降だが、それは日本人の娯楽面での革命的怪物ともいうべきもので、これの普及と反比例して映画産業は斜陽化の道をたどる。
 しかし、時代を読む先覚者は馬鹿でなかった。評論家の大宅壮一はテレビの有害性を警鐘して「一億総白痴化」なる言葉を残した。
◇大宅説を吐き捨てるごとく、東京オリンピック、大阪万博を契機に上昇気流に乗った日本は世界の経済大国に飛躍し、1戸に1台のテレビは、茶の間はもちろん、寝室に、子供部屋にそして自動車にも取り入れられた。
◇大宅氏は、テレビが日本人を白痴化させると憂いたが、最近は別の角度からテレビの危険が言われる。
 それは、風が吹けば桶屋がもうかる式の面白い説で「日本の少子化はテレビの副産物」という。
 ここで、われわれは江戸、明治以降言われてきた「貧乏人の子沢山」を思い出す。これが正しければ、現代の豊かな社会は「お金持ちの少子化」となる。日本や米国、ヨーロッパの先進諸国は、いずれも少子化を国の危機として、その対策に腐心しているが、面白いことに、低開発国といわれている国々は人口の爆発的増加に悲鳴を上げている。
 中国は共産党政権になってから、いち早く人口問題を最大の政策に導入し、1夫婦1子を強制した。
 それでも中国は年々人口が増加し、今や13億を超えるといわれる。
 アフリカなどには、今なお上下水道はおろか、電気もなく、テレビなどの電化製品はもちろん、車のない国家が多い。
 しかし、文化的に遅れているといいながらも、子沢山である。どの夫婦も2けたは出産するが、死産児や乳幼児死亡率は高い。
 一昔前の日本も同様で、電化や車社会は近々半世紀の変貌といっていい。半世紀以前の非文化的社会がいわば「貧乏人の子沢山」時代だった。逆説的に言えば、豊かさを満喫し、お金持ちになった日本はその報いとして少子化を迎えた。
◇電気のない非文化的社会は、夜は寝るしかなかった。
 今は夜も昼並みになり、終夜営業する店もあり、工場も車も夜通し動くようになった。
 家庭では深夜テレビが夜の睡眠に立ちはだかった。
 仮想恋愛、仮想セックス、仮想暴力、その他、テレビやビデオ、パソコン、ケータイなどのIT化が、日本人のまっとうな神経や感覚を麻痺させてしまった。
 テレビはチャンネルの奪いあいから家庭内暴力の原因となり、当然ながら、夫婦は別々に好きな番組、子どもにもそれぞれ1台づつを設ける時代となったから、夫婦は寝室を別にするようになった。
 子をもうけない条件がますます多くなるというのは、家族が自己主張に生き、文明の利器をそれぞれが好き放題に使って、それに酔うからだが、そのつけが、ぼつぼつ、あらゆる形で現れ始めた。そして、そのつけは、幸せを求めたわれわれの心に不幸の鬼を芽生えさせる。

2007年01月09日 18:10 |


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.shigayukan.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/58

過去の時評


  • 1月 26日(金)  【グラスギャラリー・マヌー】
     ガラスのお雛様展(~3月4日)
  • 2月 10日(土)  【大通寺】
     馬酔木展(2月10日~)
長浜市
長浜市議会
長浜観光協会